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[名作アニメレビュー] シムーン - 2009.04.24 Fri

 見事な「物語」だと思う。ファンタジーとして、SFとして、青春群像劇として。いくつもの絡み合う糸がひとつになって行く様は、よく出来た小説を読む感覚に近い。

 その世界では、すべてのヒトが女性として生まれ、17歳になったら自分で男女の性別を選ぶことができる。そして空を自由に飛ぶ古代機械シムーンを操ることができるのは、まだ男女に分かれる前の「巫女」だけだった。しかし、隣国との戦争の激化により、シムーンは兵器として使われるようになるのだった―――。

作   品   名 総合評価 テーマ
構 成
脚 本
キャラクタ
動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
シムーン 8.8 10 10 10
→2006年アニメランキングはこちら

 科学技術を目的にした戦争。宗教対立、神への愛、神とは何か?―――。こんなメディア的に苦手そうなテーマを、架空の世界が舞台とは言え、よく描いたもんだ、と思います。もっとも一番は「少女であること、とは何か」というロマンティックなテーマを描くことでしょう。

 専門用語の説明が多い上に登場人物が多いわ、ヒロインの片割れは引きこもってるわ(笑)でどうなるかと思った序盤から急速に化けていった印象があります。第1部終了と言える第9話の頃には、もうすっかりこの世界観に引き込まれていました。

 放映当時は、あまり話題にならなかったようですが、どうもプロモーションの仕方に問題があったんじゃないかと。公式サイトを初め、萌えと百合を露骨に意識しているように感じられますが、作品自体は正統派なSFであり、極めてドラマ性の高いファンタジーでもあります。たぶんもっと多くの人が楽しめる作品だったはずなのになぁ、と非常に残念でなりません。

 また面白い試みとして、「皆、かつては少女だった」という設定を生かすために、大人の男性にも女性声優を使うという徹底ぶり。最初こそ違和感がありましたが、慣れてくると、この世界観はこれでなければ、という気がしてくるから不思議。繊細なキャラクターの微妙な心情を表現する脚本も素晴らしく、多数の登場人物たちは皆それぞれ魅力的。個人的にはワポーリフとモリナスのコンビが印象に残っています。

 他に特筆すべきことが2点。ひとつは古代飛行機械「シムーン」のデザイン。巨大なアンモナイトのような有機的な機体が空を翔る様は幻想的で美しいです。もう一つは音楽。佐橋俊彦によるタンゴとワルツのリズムを多用したBGMが、作品のロマンティックな部分にマッチしていて◎。

 ベストエピソード感想は続きにて。
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2009年4月アニメ 雑感 - 2009.04.20 Mon

 いまだ、3月終了のアニメで見終えていないものがたくさんあるんですが、とりあえず、新番チェック。



■シャングリ・ラ

LASTEXILE以来の村田蓮爾キャラクターデザイン、ゴンゾ製作作品。結構期待していました。

 オープニング映像のスピード感と緻密な背景が非常にカッコイイ。それと比較すると本編はまだ物足りないです。多数のキャラクターの場面を小出しにしている構成なので2話でもまだ世界観の謎のばらまきに終わっているかなあと。

 物語が動きだすこれからに期待。とりあえず、中田譲治さん、いい味出してます。



■グイン・サーガ

 学生時代の夏休み、原作を図書館で一気借りして読んだ記憶が懐かしい。100巻超えたあたりから、ちょっと追うのがつらくなって、最近は粗筋しか把握してませんが。

 実をいうと、製作サテライトはどうかなあと思ってました。華やかなロボットアニメに強い会社なので、原作序盤のおどろおどろした雰囲気が出るのかなぁ、と。

 実際に見てみてもその辺りはやっぱり弱いです。ルードの森の画面のトーンが妙に明るいし、2話のスタフォロス砦なんて、無骨なモンゴールの中でもさらに辺境の砦なのに、やたら華やかで荘厳な雰囲気だし。

 ただ、原作準拠ということ抜きにしてみれば、単純に壮大なファンタジーとしての雰囲気はよく出ていると思いました。特に大群が移動する場面のCGの使い方はカッコよかった。



■Phantom~Requiem for Phantom

 いつもの真下監督作品な気がしなくもない作品ですが、映像が綺麗で雰囲気があるので意外と楽しめてしまいました。

 設定こそベタですが、心理描写などを丁寧にやってくれることを希望。

 とりあえず、アイン、夕叢霧香さんそっくりです。そして、さりげない描写にいちいちエロさを感じますよ。アカラサマじゃない分、余計ぐっとくるかもしれない(笑)。



■けいおん!

 京アニ製作で話題になってますねぇ。人物の動かし方はいかにも京都アニメーションらしい独特なかわいらしさがあります。

 内容的にはインパクトこそ少ないけれど、普通に楽しめそうな作品。音楽の要素をどこまで青春モノの中に入れ込めるか楽しみ。

 一方、ハルヒの方は再放送ということでいいんでしょうか。もったいつけすぎでしょう。第1期アニメはよく出来てましたけれど、旬を逃している気がしてなりません・・・。



■東のエデン

 攻殻機動隊SACの神山監督オリジナルストーリー。キャラクターデザインにハチクロの羽海野チカでかなり期待してました。

 期待の上を行く出来。オープニングのOASIS起用はびっくりでしたが、コラージュ的な映像がなかなかカッコいい。本編も映像、物語ともに引き込まれるものになりそうです。

 まず、アメリカの街並みの描写が、ここ行ってみたいと思わせるほど魅力的。CGを使ったカメラワークもおおっと思わせます。本編も掴みはバッチリな印象。というか非常に密度が濃い内容でした。

 神山監督というと、割とマジメな作品な印象がありましたが、第1話のいい具合に力の抜けた展開がポップなキャラクターデザインとあいまって好印象。



■リストランテ・パラディーソ

 原作の独特な絵柄が気になったので見てみた。人物絵はアニメ用に癖の少ないものになってるようですが、絵画的背景に3Dのカメラワークの組み合わせが新鮮で見ごたえがありそう。

 しかし、これはどういうジャンルなんだ?初老のダンディな男たちに萌える作品なんでしょうかね・・・・。絵的にはあまり初老というより中年くらいに見えますけど。とりあえず、もう少し見続けてみますか。



■バスカッシュ!

 河森監督のテイストは苦手な部分が多い気がするのですが、評判良さげだったのでちょっと見てみる。コンセプトにフランス?の方が入っているせいか、ポップで雑多でレトロな未来テイストはセンスがいいと感じられる。あからさまなエロ台詞もこのB級っぽい雰囲気のせいで、少しは許せるかも?

 そんなわけで背景などの雰囲気は好みだし、ポップ路線で突っ走ってくれれば単純に楽しめる作品になりそう。ただ、ロボットにバスケをさせる必然性はあまりないよね・・・。巨大ロボットがあまり好きではない僕としては、しばらく様子見。
 

スカイ・クロラ原作と「シムーン」が似ている、という話 - 2009.04.16 Thu

 名作アニメレビューの各話感想を追加しなきゃ、と思ってシムーンを少しずつ見返していました。1回目に見たときより、人物の心情がストンと入ってきて、やっぱり凄い作品だと思いました。

 で、ふと気づきました。これ、最終的なテーマこそ違うけれど、要素要素がスカイ・クロラに似てない?

 いや、どちらがパクリとかそういう話ではなく。単に自分自身の好みの傾向を再認識してしまったという話なのです。以下、似てるなぁ、という要素を列挙。

①戦争で「子供」が飛行機で戦闘をせざるを得ない状況であることとか。
②彼らが「大人」にならない限り、老化しない設定であることとか。
③「大人」になると飛行機に乗れなくなる設定とか。
④戦争など社会的な背景を持ちながら、一貫して「子供」の視点で描かれていることとか。
⑤彼らの「純粋であろうとする意思」にスポットが当てられていることとか。
⑥ファンタジーでありながら、現実世界の暗喩として成立している世界観とか。
⑦大人になれ、という社会における暗黙の要請へのアンチテーゼになっていることとか。
⑧微妙に百合要素が入っていそうなところとか(いや、シムーンは微妙じゃないけど)。

 何が言いたいかというと、スカイ・クロラ原作が好きな人は、スカイ・クロラ映画版を見るより、シムーンを見た方が幸せになれる気がします。

 百合耐性ない方にはお勧めしませんけれども・・・。

 ほら、でも、シムーンは厳密には百合じゃないんだよ?(だって彼女らはまだ「女性」になってないからね)と一応、力説してみる。

 本当マイナーなのがもったいない作品だと思いますので、スカイ・クロラ原作は好きだけど、映画は微妙だったなあ、という方は是非。

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スカイ・クロラの謎 考察 第6回 - 2009.04.16 Thu


■考察6 スカイ・クロラの矛盾、あるいは、クレイドゥのその後(後編)

 前回考察した、物語の流れさえ把握しておけば、あとは草薙の妄想として処理してしまってもいいかもしれませんが、それでは味気ないので考察しておきましょう。

5.スカイ・クロラの登場人物~トキノとフーコ
 この二人の描写については、そのまま受け取ると、最も矛盾が多いです。

 土岐野は草薙がC基地からいなくなった後もC基地に残っている(アース・ボーン考察参照)ため、β時系列ではA基地にはいないはずですし、フーコも「クレイドゥ」後に館を辞めていますから、同様にβ時系列では本来登場することができません。

 ただし、α時系列の頃、草薙がフーコとある程度親しくなっていることは「クレイドゥ」で明らかですから、カンナミとフーコのやりとりには草薙自身が経験したことも含まれてはいるでしょう。「クロラ」におけるフーコの登場場面に関しては、前後の場面と連続して捉えるより、断片的な記憶が混ざっていると考えた方が辻褄が合いそうです。

 草薙がフーコと親密になった経緯についても考えてみましょう。以前草薙は、比嘉沢が死んでしばらくの間、彼女の思考をなぞろうとする癖がありました。飛べなくなって不安定な精神状態で、栗田の思考をトレースしようとした結果、フーコの館を訪れた可能性はあるかもしれません。……と理屈っぽく考えてみましたが、カフェか何かでフーコと会った際に栗田のことを聞かれたと考えた方が素直という気も(苦笑)

 一方、トキノに関しては、「新任パイロットと同室である」「新任パイロットをフーコの館に案内する」という部分だけがα時系列の土岐野で、それ以外はβ時系列でカンナミとチームを組んでいた別のパイロットを「トキノ」として記憶してしまっていると考えるべきではないかと思います。
 
6.スカイ・クロラの登場人物~ササクラとクサナギ・ミズキ
 笹倉と草薙瑞季は、α・β両方の時系列で「本物として」存在し得る人間です。

 瑞季の出番は1回きりですが、まず本物と考えてよいでしょう。これがα、βどちらの時系列に属するかについてですが、β時系列と考えたいと思います。カンナミに対して妙に気やすいところから、記憶をなくした「姉」に会いにきたと想像します。偽クサナギは仕方なくその監督役をしているといったところでしょうか。

 笹倉についてですが、α・β両方の時系列で本人と考えます。違和感を感じる描写もありますので、考察してみることにします。

①本人っぽい描写
・凄腕のメカニック。
・フラッタで栗田に依頼された息継ぎの改造をカンナミの機体に施す。
・カンナミに対し親しげ。偽クサナギに対しては距離を置いている。
・冒頭「それ、誰に教わった」→記憶をなくしたカンナミを試しているように思われる。

②違和感を感じる描写
・初対面時「まだ若そうだ」という印象→笹倉と初対面時の記憶が混ざっている?
・「クサナギ」に対し頬を赤らめる描写→偽クサナギを女性として意識している?
・トキノの「瑞季=娘」説に賛同している。→これまで瑞季と会ったことがない上に、偽クサナギが彼女を連れている姿だけから判断すれば、そう見えるのかも?

7.スカイ・クロラの登場人物~甲斐の不在

 クロラには、これまで草薙の上司であった甲斐の姿がありません。

 甲斐の登場は、クレイドゥの後半、味方機を撃ち墜とした際に迎えに来たのが最後です。会社は責任問題を回避するため、対外的には偽クサナギを用意し「緊急事態であった」ということにしたのでしょうが、内部での責任問題もあったはずです。

 クレイドゥエピローグでも甲斐が登場していないことを考えるに、草薙の担当から外された、あるいは情報部を辞めることになったというのが妥当な線かと思います。「ドール・グローリィ」で、軍を辞めた草薙の面倒を見ているのが彼女であることを考えると、結構泣ける裏ストーリーになるかも(妄想)。


 以上のことを踏まえて、時系列別に纏めてみましょう。α時系列を水色、β時系列を黄色で表示。

初冬栗田が撃たれた事件で危険に晒された草薙に対し、今後司令官任務に徹するよう命令が下される。
草薙、フーコと親しくなる。
C基地に新任のパイロットが配属され、土岐野と同室になる。
大規模な戦闘(曇天)。栗田の機体と遭遇した可能性あり。
草薙、病院を抜け出した栗田を追い、彼を射殺。
杣中にそれを話した後、草薙は入院。会社は草薙の死亡を発表。
同年 冬 病院の草薙の元に、裁判中の相良が訪ねてくる。
相良の注射により、草薙はキルドレに戻る。
翌年 初春 病院を抜け出した草薙は、相良の元に身を寄せる。(「クレイドゥ」)
非武装地域の戦闘にて草薙は4機を撃墜し、その後相良を射殺。
草薙、「カンナミ」としてパイロットに復帰する。
甲斐は担当を外される。
この頃、笹倉がA基地に移動になっている?
偽クサナギがA基地(=兎離洲)に配属される。
A基地に新任のパイロットが配属され、偽クサナギと親密になる。
初秋偽クサナギが彼を射殺、基地にはそれに関する噂が流れる。
カンナミ(草薙)、A基地へ転属、偽クサナギに会う。
爆撃機襲来、偽クサナギは北の観測所へ抗議に行く。
カンナミのもとを、草薙瑞季が訪れる。
晩秋基地に見学者。ログハウスで偽クサナギと食事。2日後湯田川が墜ちる。
初冬基地の移動、大規模な戦闘(晴天)。
A基地に戻る。
カンナミ、偽クサナギを撃つ。彼女は死亡、カンナミは再入院。
カンナミは混濁した意識の中で過去を再構築する。(「クロラ」)
その後カンナミは、約10年に渡って入院生活を送ることになる。(「イクリプス」)
キルドレを人間に戻す方法が発見される。草薙もその治療を受け、回復する。
約10年後、退院した草薙はフーコに会いに行く。

 「クロラ」における大規模な戦闘が「フラッタ」でのものと同じかどうか大分悩まされましたが、空模様の記載があったので、別物と判断しました(地域が違えば、天候も異なる可能性はありますが)。

 こうしてみると、割とシンプルに説明がついてしまったと言えなくもないような……。もっとも個人的にはまだ、いくつか引っかかっているところが残ってはいます。偽クサナギが草薙に外見が似ているという解釈が、この作品の世界観からずれている気がすることが、最もしっくり来ていない部分ですかね。

 とりあえず、以上をもって、スカイ・クロラシリーズ考察はいったん完結としたいと思います。読みにくいレイアウトを直したり、あるいは、何か思いついたら追加記事を書いたりということもあるかもしれませんが。

 長文にも関わらず、ここまでお付き合いいただいた方、本当にありがとうございます!

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スカイ・クロラの謎 考察 第5回 - 2009.04.16 Thu


■考察5 スカイ・クロラの矛盾、あるいは、クレイドゥのその後(前編)

 前回までの考察をとりあえず事実であると考え、スカイ・クロラを読み始めると、その矛盾の多さに驚きます。しかし、森先生の著作に限ってはそれが作者のミスということは非常に考えにくいわけで、意図されたものと考えるべきでしょう。

 前回の考察でも述べた通り、「クレイドゥ」後の草薙水素は、自身を「カンナミ」と思い込んだ状態のまま、「記憶がどんどん希薄になり」、「人から聞いた話」「夢で見たこと」などが現実に混ざり合っている状態です。「クロラ」のエピローグは病院であることを考えると、「クロラ」で描かれている物語はカンナミ=草薙が自分の記憶であると思い込んでいる「妄想の混じった」回想と考えるのが妥当であると思います。

 森先生が以前「ダヴィンチ」の2008年8月号(no.172)にて「スカイ・クロラがデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』の影響を受けている」という内容の発言をされていた、ということも、この解釈に対して消極的な根拠にはなりそうですね(最近ネットで見つけた話なので、残念ながら私自身はそれを読んだことはありません)。夢オチに近いと言えなくもないですが、その中から、何が事実だったかを探るのもまた面白いかと思います。

1.スカイ・クロラの時系列と物語構造

 「クロラ」は公式で最終巻と位置づけられていますし、「カンナミ」の存在は「クレイドゥ」エピローグから連続しているように見えます。しかし、作中で重要なファクターとなる「栗田がいなくなって1週間後」というのは「クレイドゥ」よりも前の話になってしまいます。ただし、上述のように、「クロラ」が草薙の混濁した記憶に基づく回想であるとするならば、この点は問題なくなります。すなわち、

α.栗田がいなくなって1週間後(栗田が入院している間)、C基地の司令官として新任のパイロットを受け入れた記憶

β.「クレイドゥ」の後、「カンナミ」として女性司令官「クサナギ」のいるA基地に赴任した記憶

 の両者を混ぜ合わせたものがベースになっていると考えればよいかと。もっとも、それ以外にの「栗田から聞いた話」「フーコから聞いた話」などいろいろな要素が混ざっているとは思いますが。そんなわけで、「クロラ」に描かれている出来事がα、βどちらの時系列に属するか、あるいは単なる妄想なのか主要登場人物を通して考えてみたいと思います。

2.スカイ・クロラの登場人物~カンナミは実在したか?

 「クロラ」に登場するカンナミ=語り手は「クレイドゥ」以前の草薙と考えてよいと思いますが、はたして「函南」というパイロットは実在したのでしょうか?「カンナミ」が初登場したのは「ダウンツ」で草薙と会った入院中の少年という形でしたが、結局、彼が実在したのか、初めから草薙の夢の中だけの存在だったのかは明らかにされません。(注:この点について番外編その3で考察し直しました。 2010.3.22記)

 もうひとつ、「クロラ」でのカンナミについて記すことがあるとすれば、カンナミ=草薙はあくまで女性である、ということでしょうか。「クロラ」では、カンナミが男性でなければならないような表現はいくつかあります(トキノと同室、上半身裸で瑞季に対応している、フーコとの関係など)が、おそらくは栗田やフーコから聞いた話や、「クレイドゥ」でフーコと一緒のベッドに寝ていた際の記憶が混ざっていると思われます。

3.スカイ・クロラの登場人物~クサナギ氏は誰?

 β時系列での女性司令官(草薙の代役をしていた人物)がベースですが、「クロラ」での「クサナギ」の発言の一部には草薙自身の記憶がミックスされてしまっていると思われます。これはα時系列での草薙自身と境遇が似ていることが原因でしょう。便宜上ここでは彼女を「偽クサナギ」と呼ぶことにしましょう。

 「偽クサナギ」ですが、登場が唐突である割に、物語的には重要な人物と言えそうです。彼女がどういう人物か、手がかりになりそうなのは「クロラ」中盤のクサナギ、カンナミの会話でしょうか。カンナミ(草薙)がパイロットになって5年と言っているのに対し、偽クサナギはキルドレになって14年と言っています。

 これを事実と捉えるならば、草薙よりもずっと長く生きているキルドレということになります。前巻までに描かれてきた草薙水素よりも死にたがりの傾向が強いのはそのせいでしょう。草薙自身長く生きているほうですから、自分との共通点を見出し、惹かれるのもあり得ることではないかと思うのですが、どうでしょう?

4.スカイ・クロラの登場人物~「クサナギ」は「クリタ」を殺したか?

 基地で囁かれている「クサナギがクリタを撃った」という噂について考えてみましょう。作中の重要な要素と言えますので、こうした噂が流れたことは実際にあったことだと考えることにします。では、それはα時系列、β時系列どちらの出来事でしょうか?

 α時系列では栗田は基地からいなくなっているものの実際には入院しているだけ。そして草薙が基地のメンバーにそれを隠す理由はないでしょう。戻ってから簡単に説明くらいはしそうです。しかし、「クロラ」ラストで「クサナギ」は「クリタ」を殺したことが事実だと認め、「彼が好きだった?」という質問を肯定します。ここで感じ取れる恋愛的なニュアンスを考えてもフラッタでの草薙と栗田にはあてはまらない気がします。

 となると、β時系列の偽クサナギが恋愛関係にあった「カンナミの前任者」を殺したと考えるのが筋が通るのではないでしょうか。それが「クリタ」の話になっているのは、無意識下で栗田を撃ったことを覚えている草薙(カンナミ)の中での記憶の改竄によるものでしょう。ここでの記憶の混濁が、「クロラ」でβ時系列とα時系列が混ざってしまった原因と思われます。

 また、考察4で述べた「スピッツ・ファイア」での出来事は、偽クサナギとA基地に着任したばかりの「カンナミの前任者」が接近するきっかけのエピソードだと考えるとしっくりくる気がします。ここでの「女」を感じさせるクサナギの描写は、一貫して少年的な草薙水素より、むしろ「クロラ」の偽クサナギに近そうです。


 主要登場人物と物語の大きな構造について考察してみました。ここまでの考察により、クロラの物語自体は、β時系列、すなわちクレイドゥの後の物語が中心であると考えてよいでしょう。クリタという名前で混乱させられますが、偽クサナギが殺した相手が「栗田仁朗」でないということを前提とすれば、かなり物語はわかりやすくなります。

 次回、脇役たちについても考察した後、纏めてみたいと思います。

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スカイ・クロラの謎 考察 第4回 - 2009.04.15 Wed

 スカイ・クロラシリーズの考察 第4回目です。


■考察4 スカイ・イクリプスの時系列と登場人物

 ここでは、短編集「スカイ・イクリプス」収録作品の中からシリーズ全体の時系列の手がかりになりそうなもののみを考察しやすい順に取り上げることにします。長文になってしまい、読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください・・・。

1.アース・ボーン

 フーコが館を辞める直前のエピソード。基地ではサカシロ、マシマ、トキノがチームを組んで約半年が経過しているようです。また、最後に登場するカフェの描写を考えると、彼らが所属するのはC基地と思われます(考察2参照)。

 マシマの「草薙大尉のことか?」という台詞を考えると、マシマ自身はあまり草薙のことを知らない可能性が高いですね。「(あの有名な)草薙大尉のことか?」というニュアンスでしょうか。またフーコが草薙から金をもらった(らしい)ことから、「クレイドゥ」の後のエピソードであることもわかります。

 冒頭で外が寒く、暖房を付けているらしい司令室が「死ぬほど暖かい」という描写があることから、季節は初春、「クレイドゥ」にて草薙が復帰した直後あたりと考えるのが妥当ではないかと。もっとも当時の草薙は自身を「カンナミ」と思いこんでいるはずなので、草薙の希望を聞いた甲斐がフーコに送金する手配をしたのでしょう。

2.ドール・グローリィ

 草薙が自身を「カンナミ」と思い込んだまま、およそ10年が経過、妹の瑞季はそろそろ就職。そんな時期の物語。最後の会話で瑞季がついた「嘘」の内容から「お姉さま=カンナミ」は明らかでしょう。甲斐が未だに草薙の側に付いているのは、草薙を利用していた罪悪感からかもしれません。

 瑞季の回想にて、草薙が栗田を撃ったことが客観的事実であることがわかります。このエピソードを読むまでは、草薙の妄想という線もアリと思っていましたが、これで確定です。

 また、重要なポイントとして「クレイドゥ」エピローグでパイロットに復帰しているはずの「カンナミ」が、ここではまた入院生活に戻っていること。

 会社はもともと草薙水素を飛ばせたくなかったはずですから、復帰させたのもおそらく「草薙水素」としての自我を回復する手段としてでしょう。いつまでたっても回復のきざしの見えないカンナミに業を煮やし再入院させたか、あるいは、パイロットとして精神的・身体的に問題が発生したかのどちらかと思われます。

 このあたりが、「クロラ」と密接に繋がってくる部分ではないかと。もっとも、その点については「スカイ・アッシュ」にて、より突っ込んだ種明かし的な内容が語られています。

3.スカイ・アッシュ

 「クレイドゥ」で相良が「いずれ誰かが発見する」と予言した通り、作中では既にキルドレを普通の人間に戻す方法が発見されているようです。治療を受けた草薙は記憶が確かなものとなり、回復します。おそらく「ドール・グローリィ」では既に回復の途上だったのでしょう。

 日常生活に支障をきたさないレベルにまで回復した草薙がフーコに会いに行くエピソード。フーコの台詞から、「クレイドゥ」でのバス停の別れ以来の再会であることを感じさせます。シリーズ完結編にふさわしい余韻の残る本作ですが、途中の草薙の回想にて、かなり重要なことが語られています。

 相良が草薙をキルドレに戻した。「その代わり、どんどん記憶が希薄になった」、「人から聞いた話、夢で見たこと、映画で見た物語、そんなものが、自分の人生と混練され、常に泡だっていた」。これはつまり、キルドレに戻ってからの草薙の一人称で語られる出来事の信憑性にかなり疑問の余地が出てきます。

 明らかに妄想が入り混じっている「クレイドゥ」の文体に比べ、一見まともそうな「クロラ」の文体ですが、その内容には次回の考察で述べるように多くの矛盾が混じっています。どれが本当にあったことで、どこからが草薙の創作(=妄想)であるかを見分ける必要がありそうです。

 その中で、「栗田を撃った記憶」「相良を撃った記憶」「誰かを撃った記憶」ははっきりしていることから、どうやら、それは本当ではないか、と思わせます。

4.スピッツ・ファイア

 「イクリプス」収録作品の中で、これが最も混乱させられました。

 舞台は、A基地近くのカフェ(考察2参照)。また、「上司の女」が「昔エースパイロットだったらしい」ことから、彼女は「クサナギ」と思われます。しかし、草薙が「上司」という立場になった「フラッタ」ではC基地にいますから、可能性は2つ考えられます。

 1つは、栗田が相良に撃たれ病院に入院している間に、草薙はA基地に移ったという説。もう1つは、この作品の「クサナギらしき人物」は「クレイドゥ」最後に言及される偽物で、草薙はC基地のままという説。

 どちらでも説明はついてしまいますし、当初前者と考えていたのですが、後者をとることにします。「クロラ」での「クサナギ」について考えれば考えるほど、これが「彼女」の話に思えてきたもので。


 実のところ、この考察を書きながら、自分が当初考えていた考察の内容も、かなり見直すことになっています;;。深く読めば読むほど、いろいろ考えてしまう作品ですね。次回「クロラ」の考察をするにあたって、「草薙水素」の空白部分をできる限り埋めてみたいと思います。

(追記)2009/4/15 スピッツ・ファイアの考察を修正しました。

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忙しい・・・ - 2009.04.06 Mon

すいません・・・。
特にスカイ・クロラ関係でアクセスしてくださる方へ。
ちょっと最近忙しくて更新記事を書いている時間が取れません。

そのまま放置するつもりはありませんが、もう少し時間をください・・・;;。

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外部リンクからアクセスしてくださる方へ。スカイ・クロラ関係は単独カテゴリに移動してますので、上のメニューからどうぞ。

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