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[Sky Crawlers] 考察補完 カンナミは実在したか?~ダウン・ツ・ヘヴン再考 - 2010.03.22 Mon

 スカイ・クロラシリーズはいまだに時々読みたくなる。中でもナ・バ・テアとフラッタ・リンツ・ライフは何度も読んだ。フラッタは初読時にはこれほど好きになるとは思わなかったが、今は自分の感情に対し一番しっくりくるから不思議だ。主人公が男性である、ということが感情移入しやすくしている要因かもしれない。

 そんな中でダウン・ツ・ヘヴンだけは一番読む回数が少なかった気がする。水素とティーチャのくだりはナ・バ・テアのエピローグ的なもので気に入っているのだが、それにもかかわらず、僕はこの本における水素の感情の変遷がいまいちしっくりきていなかった。

 それは主に中盤に登場する病院の少年「カンナミ」とのくだりに起因するもののように思えた。彼は実在するのか、水素は彼をどのように認識しているのか。最近になって、ひとつ気づいたことがあったので、今回はそれを整理してみようと思う。



 水素は函南に病院の屋上で二度会う。二度目のとき、草薙は彼を通して自分を見つめる。彼と別れた後、水素は火の消えた煙草を見る。この表現の意味するところは何だろう。

 その後一度、夢でカンナミを見る。悪夢として。

 しばらく後、水素は内陸の基地で函南と再会する。彼は水素のもとを訪れ、水素は彼にキスをする。彼がいなくなり、水素は床に落ちた煙草の吸殻を見る。この表現の意味するところは何だろう。

 最後に水素はやはり夢でカンナミを見る。彼は言う。「僕はあなた以外じゃない」。



 明らかに夢である2回以外では、どちらも煙草の描写がある。一度付けた煙草の火が消えている、ということはその間に何かがあったということだ。水素は無意識に火を消したが、どのタイミングで消したか思い出せない。そこでの出来事、自分の感情を水素は整理できなかった、ということだと思う。

 逆に考えれば、そこで記述されている函南とのやり取りは実際にあったことと考えていいのではないだろうか。すなわち少なくとも「函南」を名乗る少年は実在する、と僕は考える。
そして、函南から聴いた夢の話をその後、自分の記憶の中に取り入れてしまうほど、水素は函南から心的影響を受けた。



 では、水素にとって函南はどういう存在だったのか。

 しがらみを抱えた今の自分自身ではなく、記憶を失ってリセットされた一パイロットである函南は、水素にとって「なりたかった自分自身」そのものだったはずだ。そして、草薙は函南と会うたびに、今の自分が「なりたかった自分自身」から遠く離れてしまっていることを感じる。

 水素は最後の夢を見る前、ティーチャと会い、涙を流すほど気持ちが昂ぶっている。このときの水素はそうでありたかった「昔の自分」に戻れた状態だったと思う。その後しばらく水素は陽気だ。調子がいいと自覚する。

 それを現実に引き戻したのが、最後の夢だった、のではないだろうか。「カンナミ=なりたかった自分の姿」を見ることで、函南と会ったときの自分の感情、そこから遠く離れてしまった自分の立場を再び認識してしまう。

 そう考えると、その後の戦闘での茶番に水素があれほど激昂したのは、ただ楽しみにしていたティーチャとの戦闘に水を差された、という理由だけではないと思えてくる。



 作中で「恋愛」という言葉は語られないにせよ、水素がかつてティーチャに抱き、今回カンナミに対して抱いた感情はほぼ恋愛感情と言っていいと思う。それはどちらもその時々の水素の憧れと直結していた。今回のカンナミに対するそれはより刹那的で、現実のしがらみと絡んで、自己否定に結びついていた。

 ダウン・ツ・ヘヴンという物語は水素の感情の揺れをシリーズ中で最も多く表現していると思う。エピローグにおいて、おそらく様々な感情やしがらみを受け入れた上で、何とか生きていこうと表明する水素の姿は、やはり単なるファンタジー以上の意味を持って、僕には感じられる。

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● COMMENT ●

 こんばんわ、チルハナです。私もスカイ・クロラシリーズの、特にフラッタ・リンツ・ライフを繰り返し読んでいます。草薙を庇って撃たれたことを切欠に、クリタが草薙への思いをはっきりと自覚し、それでも彼女に触れるのではなく、ただ一緒にいつまでも空を飛んでいたい、という究極のプラトニック・ラブを思わせる描写の簡潔さ、透明さに心惹かれました。

 キルドレたちはあまり飲食に頓着しない性質であるのに、病室で草薙から貰ったジュースを物凄く美味しく感じたのは、草薙に心を掛けられている嬉しさで、クリタの心が高揚していたからなのでしょうね。
 だからこそ、草薙の部隊から引き離されると聞かされてからの彼の心の落胆は、淡々と綴られながらも痛々しいほどに伝わってきました。

 読者としての私の全体目線は、キルドレにひどく思い入れをするジャーナリスト・杣中の立場ですが、報われない想いを抱え、それを飲み込んだ忠実なクリタに、より感情移入してしまいます。
 病院を脱走したクリタは、大戦で身体を損なってしまったのでしょうか。
 飛べないのなら、せめて草薙に撃たれて死にたい。 結局、キルドレ達は地上の生活に適応しない人種だったのでしょうか。

 未だに謎は謎のままですが、スカイ・イプリクスにおいて、草薙は空を飛ぶことを止め、地上で生きることを選んだように思うのですが、そういえば、それはそのままクリタの願いでもあったことを思い出しました。
 きっと草薙自身にとってもクリタは、ティーチャや函南とはまた違った、特別な存在であったのでしょうね。

Re:

Re:
フラッタ・リンツ・ライフへの思い入れは多分僕もチルハナさんと似ていると思います。

僕にとって最も印象に残ってるのは栗田と草薙の最後の電話のシーンかもしれません。「お元気で」と何度も繰り返してしまう栗田にも感情移入してしまうのですが、ここの会話で草薙の一人称が「僕」なんですよね。上司モードのときは「私」で通していたのに。

草薙にとっても栗田は素で接することのできる相手だったんだなぁと思えて、切ない気分になります。

いつも丁寧なコメントありがとうございます。今後もときどき覗きにきてもらえると嬉しいです。

やっと腑に落ちてきました

はじめまして。
夏になるとスカイ・クロラのシリーズを読みたくなります。
今年はこちらの説明を見ながらなので頭が整理されて楽しいです。
ありがとうございます。

いまフラッタ・リンツ・ライフまで読み終え、
おかげでかなり納得できてきたのですが、
「デッドアイ、右だ!」という声は何だったのか、
というのが気になりました。答え、ありましたっけ?
気のせい、というのは非科学的ではありませんが、
あれだけ重要そうに書いてあるので、なんだか残念ですよね。
「近くには誰もいなかったはず」とあるので、それを信じれば
そんな声を出せるのはクリタ本人か敵機パイロットだけなんですけど。

そんな感じで、
いまだに全部は納得できないまま再読する日々です。
でも、かなり説明されてて助かっています。ありがとうございます。

Re:

 こんにちは。読んでいただけて嬉しいです。

 なるほど、「デッドアイ、右だ」という声に関しては曖昧な部分はありますね。僕はそれが草薙本人の声であっても、栗田の幻聴だとしても、どっちでもありだな、と思って読んでました。

 このときの戦闘に草薙が参加している可能性はあります(合流した別の部隊にいた、とか)。敵機の無線は聴こえないと思うので、理屈で考えるなら「栗田には見えなくても、視力の良い草薙には見える位置だった」というケースでしょうか。その場合草薙は、味方の無線のやり取りで「デッドアイ」と呼ばれていた栗田機を偶然見つけ、かなり気にかけていた、ということになりますね。

 栗田の幻聴だとするならば、栗田が無意識に「草薙ならこう飛ぶだろう」という感覚を持っていて、その感覚に助けられた、と考えてもいいのかもしれません。つまり、草薙と飛んでいた時間の蓄積が栗田の中にちゃんとある、ということを描くために、あのシーンが存在するのではないでしょうか。

 フラッタという物語が、栗田の草薙への思いを描いた物語であるということを考えると、後者の解釈の方が個人的にはしっくりくるかも。




なるほど

なるほど、最初のほうで、クサナギの「一時も止まるな」という教えが身についてきたという記述がありますね。

ただ、キルドレは反復と単純化で記憶を曖昧にする、という記述からすると、声が聞こえるというのが微妙に感じられてきます。「なぜかその時、右に曲がらなければいけない気がした」という感じでいいはず。「あとで考えてみると、クサナギのように飛ぶクセがついていたんだろう」とか。

なんだか、単にクレイドゥ・ザ・スカイ(の僕=クリタ説)をミスリードするための布石だった、という気もしてきます。

さらに考えてみると、危ない状況になってから「デッドアイ、右だ」と言って(名前を呼んでる暇があるのか)、それを聞いたパイロットが反応して避ける、なんていうことは野球漫画でしかあり得ない、つまりそれこそ非科学的、とも言えますね。

もっと何か伏線があるのかもしれませんけど、とりあえず空耳ということで私も落ちつきました。ありがとうございました。


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