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[Novel] 桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』 感想 - 2010.10.03 Sun

 いつのまにか文庫化されていたので、桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』を読んだ。好きな作家にも関わらず直木賞受賞前後からの作品をほとんど読んでいなかったのだが、今回読んだこの作品は、やっぱり僕の好みだった。それ以上に、今まで感じていたもの以上のものを読まされて感嘆した。これは最近の作品も読んでみなくては。

 今回は『赤朽葉家の伝説』の感想というより、僕がこれまでに読んだ桜庭一樹作品全般について今の時点で考えてみたこと、になってるかもしれない。項目1が若干ながら『ブルー・スカイ』のねたばれになっているかもしれないので、未読の方は注意を。 1.一風変わった「せかい系」の文脈

 桜庭一樹の著作には「せかい」という言葉が使われることがときどきある。「世界」でも「セカイ」でもなく。

 最近は往々にして小説の中でキャラクタが「世界」を語ると、中二病的な文脈でとられてしまう傾向が多い気がする。それが良い悪いというのはまた別問題。だが、一般にセカイ系とされている作品の多くは経験論的世界観、すなわち「自分が知覚できる範囲=セカイ」という価値観で作られていることが多い。そして、そのセカイは自分を含まない、むしろ対立する概念として認識されたりする。

 ところが、桜庭一樹の場合、少し異なっている。彼女が描く「せかい」は当人を確実に含む。「セカイ系」において自分の死はセカイの終わりだが、せかいは終わらない。「せかい」とさよならすることが「死」なのだった。

 どうも「せかい」というシステムの基本は「社会」というものに近い。それにプラスして個々人の感覚の違い、あるいは変化によって、せかいは姿を変える。知覚としての変化はもちろんだが、個々人の行動・言動の集合が、せかいの流れを形づくっていく。その場合には「せかい」は「時代」になったりする。

 ときには主人公はこの「せかいの裏側にある大きな流れ」を知覚していたり、していなかったりする。しかし、主人公が知覚していなくても、彼女の知らないところで確実に変わっていくものが作中で描かれることが多い。

 ここで描かれる世界の捉え方は、現実生活における自分の実感に多少の希望を織り交ぜているようで、受け止めやすい。この柔軟で包容力のある「せかい」が僕は好きなのだと思う。


2.ファンタジーと寓話性

 日本って、どうもファンタジーの土壌のない国だと思う。いや、ファンタジー作家は沢山いらっしゃるし、日本製のファンタジーを僕は楽しませてもらうのだが、メジャーになることがない。邦画や国内TVドラマでホラー以外のファンタジーが非常に少ないことを考えると、最近はそう思う。国内でヒットするファンタジー系の洋画も「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」といったハイファンタジーが主で、日常とファンタジーの境界が曖昧なものはまず受けない。

 なので、僕は村上春樹だけが国内で受けていることが不思議でしょうがないのだけれど。何でだろう?もっとも、ここでは村上春樹を語る気はないので、本題に戻ろう。

 桜庭一樹の作品は表題に述べたファンタジー要素や寓話的な要素が入る作品が多い。「赤朽葉家の伝説」もそれは例外ではない。万葉の千里眼が最たるものだと思うが、「空飛ぶ男」というモチーフや毛鞠のキャラクタ性も、非日常感を感じさせるのに一役買っている。何より、母娘三代に渡る年代記(=伝説の終焉)を最後の娘が語るという物語構造が寓話的だ。

 ファンタジーや寓話における抽象性というのが、少なくとも僕にとっては物語における最大の楽しみだ。物語におけるそうした抽象性は現実の暗喩となり、自己投影や現実を考えるきっかけになる。森博嗣がエッセイの中でこんなことを述べていた。『抽象的すぎてわからない?(中略)抽象的だから理解できるのだし、具体的すぎてわからないものが多すぎるのだ』。まったくそう思う。

 僕は最近自分の好きなものに自覚的であろうとしていて、それに少しでも関係しそうなことから手を出していく。だから物語を受け取るときも、この物語は、ここに描かれている価値観は今の自分に関係あるだろうか、自分に照らし合わせてどうだろうか、と考える。そういった意味でも桜庭一樹の物語はどことなく他人事でない感じがして好きなのだ。

 最初に、ファンタジーは受けない、と書いた。よくわからないのだけれど……多くの人は物語に自分との関わりを求めてないということなんだろうか……?


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