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[Novel] 海原零『銀盤カレイドスコープ』 - 2008.10.31 Fri

 ちょうどフィギュアスケートのグランプリシリーズが始まった時期ということで、この小説のレビューをすることにした。読んだのは大分前なのだが、もし僕がライトノベルでランキングを付けるとしたら5本の指には確実に入る傑作だと思う。

 フィギュアスケートのシーンの躍動感、演技者のリアルタイムでの感情の動き。数分の中でのドラマから伝わる凄さをここまで描ききった作品は、ライトノベルというジャンルを離れても、僕は他に知らない。音楽小説でライブのシーンなどいくつかこれに近いものはあるけれど。もし美少女ゲーム風の表紙イラストで敬遠している人がいたら、騙されたと思って手にとって欲しい1冊、もとい9冊である。

 主人公桜野タズサは16歳のアイススケーター。緊張しがちで本番に弱いという女の子っぽい部分もありつつ、周囲に対する高飛車な態度でマスコミからは嫌われている。彼女の1人称で語られる1-3巻、7-9巻がメインストーリーとなり、スポ根的な成長物語が描かれるのだが、その間に挟まれる4-6巻において、外伝的に周囲を取り巻くスケーターたちのストーリーが語られる。

 以下、ちょっと長いですが、3部に分けての感想・レビューです。



第1部=1~3巻

 1-3巻では恋愛要素が強めだったり、少女マンガのスポ根モノ的な色合いが強かった。演技者の立場からのストーリーということもあり「ガラスの仮面」などが好きな人はきっと気に入るだろう。しかし、3巻の終わりでタズサは「汝、生身の男と恋するべからず」と自分に戒めを掛ける。それは最終巻まで解かれることはない。

 また、もうひとつ独自の要素として、マスコミとのやり取りがある。現実世界でもイチロー選手の報道などを見ていると、メディアや記者による偏見が感じられたりすることがある。この作品はそういったものに対する強烈な批判がある。マスコミの記者たちを相手に啖呵を切るタズサを見ているだけでも痛快だ。



第2部=4~6巻

 4-6巻ではタズサの一人称から離れ、妹のヨーコ、アイドルスケーターのキャンドル、タズサのライバルである至藤響子・ドミニクがそれぞれ取り上げられる。それぞれの巻で描かれるテーマは異なるものの、さまざまな挫折や葛藤を経て巻のラストで彼女たちが辿り着く結末は今後の彼女たちの輝きを予感させる。タズサ視点で「イヤな奴」だったドミニク・ミラーでさえ、これを読んでしまっては応援せざるを得ない。

 そして、それぞれの視点の物語の中で圧倒的な存在感を放つ桜野タズサ。主役を離れてより輝きを増しているかのような彼女自身の物語へと期待が煽られる。この第2部以降、この作品は、アスリートたちの挫折と成功を描く群像劇へと変貌していく。まさに「カレイドスコープ」のように。



第3部=7~9巻

 そして、7-9巻で物語はタズサ自身の下へ帰ってくる。

 これまで語られなかったBIG4の最後の二人、NO.2たるガブリーと女帝リアにスポットが当たる7巻。何なんですか、このガブリーの可愛さとカッコよさは。大ファンになりました(笑)。そしてサービスシーンに見えなくもないタズサとリアの蜜月(?)。それは後に訪れる二人の戦いへの痛々しい伏線。この巻のラストでリアに挑戦状を叩きつけるタズサのカッコイイことといったら、もう。

 8巻。これまで出てきた登場人物たちがまさに競演。個人的には至藤響子のシーンが好き。観客席の大合唱なんて、鳥肌ものですよ。そしてタズサのショートプログラム成功でラストへの完璧な引き。

 9巻。読者は第1部をなぞるようなタズサのフリープログラムの成功とリアとの和解なんていうエピローグを期待していただろう。けれど読み始めて違和感を感じることになった。巻の厚さに対して、そして8巻に比べても、各選手の演技があまりにもすらすらと進みすぎるんじゃないか、と。そして読者をどん底に叩き落す展開。初めて読んだときは、これタズサの夢の中なんじゃないか、と思って読み返してしまったものだった。

 訪れるのは長い絶望の期間。この巻の半分以上を占めるこの描写は、本当にキツイ。あまりにもリアルすぎて。タズサは暗闇から抜け出せないまま、ただの責任感で最後の戦いに赴く。出来すぎのショートプログラム。フリーで選手たちの戦いを見て、そしてガブリーの鬼気迫る演技を見てわずかに灯る火。そして最後のシンデレラ・プログラム。




 挫折→成功という流れを各巻で繰り返すこと。それはエンターテイメントの王道でありつつも、こうしたスポーツものやバトルものでは力のインフレを起こしてしまう諸刃の剣でもある。それを心理描写と構成の力で、全9巻、リアルに描ききったのは凄い。そしてラストでのタズサの演技での圧倒的な高揚感とカタルシス。こんな素晴らしい瞬間をページを開くたびに味わわせてくれる、そんな作品を生み出してくれた海原先生に感謝したいと思います。

参考までに: フィギュアスケートでのジャンプの見分け方

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