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スカイ・クロラシリーズ再考 Re第1回 - 2014.01.29 Wed

Re1-1 仕切り直し

 再考第1回を書いた後、僕は「カンナミ=函南」説をベースに考察を進めようとしていたのですが、その前提ではどうしてもおかしな点が出てきてしまいました。結局、当初予定していた再考の流れを一度ここで仕切りなおすという形で、Re第1回とさせていただきます。

Re1-2 『ジャイロスコープ』と『スカイ・クロラ』の矛盾

 『クロラ』作中において「カンナミ=函南」と考えるならば、クサナギは『ナバテア~フラッタ』までの草薙本人と考えるのが自然です。多少性格が変わったようにも見えますが、カンナミの一人称視点でみればそう見えることもあるでしょう。

 ということで、「カンナミ=函南であり、『クロラ』の内容は実際にあったこと」と考えて作中描写を解釈しようと試みてみたのですが、『ジャイロスコープ』の時期を考えたとき、どうしても解決できない矛盾が生じてしまったのです

ジャイロスコープ時系列

 ②~④からすると、『ジャイロスコープ』は『フラッタ』以前に見えるのですが、①の描写だけがどうしても説明がつかないのです。逆に①を優先して『ジャイロスコープ』『クロラ』が同時期と考えてみましょう。②は『クロラ』が一人称であるがゆえの認識の問題として何とか説明できますが、③④は無理です。

 『ジャイロスコープ』で笹倉が回想する息継ぎの改良が、「『フラッタ』で栗田が要望し、『クロラ』で笹倉が行った改良」とは別物であり、たまたま似通った描写だったと割り切ってしまうことはできます。しかし、森先生は『イクリプス』は作品を読み解くためのヒントとして書かれたものとコメントしています

ダ・ヴィンチ2008年8月号より 『スカイ・イクリプス』についての森先生のコメント

 読めばすべてがわかる、とは言わないですけれども、少なくともわかるために必要な情報は書き込んであります。ミステリィ作家としてデビューした人間の悪い癖ですね。つい、こういう仕掛けをやってしまう(笑)~(中略)~
 映画化が決まってから、作品についてコメントしているブログなどが増えてきたので読みましたが、深く理解した意見のものは少ないという印象を受けました。ちょっとわかりやすく補足説明をしておく必要があるかな、と。ネタばらしにならない程度に明かしてしまえば、このシリーズのもとになっているのはデヴィッド・リンチ監督の『ロスト・ハイウェイ』なんですよ。

 実際、『イクリプス』所収の短編は森先生のコメント通り、本編のその後だったり、空白期間だったり、新しい情報を出すものばかり。その中にあって、この『ジャイロスコープ』は、一見『本編中の日常話』のように見えます。

 僕は、①と②~④の間の矛盾は"意図的に"本編を解釈するためのヒントとして書かれたものだと思うのです。つまり、矛盾しているように見えるのはそもそも考察の前提が間違っていたからなのではないか。三人称で描かれた『ジャイロスコープ』の記述を疑えない以上、『クロラ』の記述を素直に事実と考えた今回の前提を疑うべきなのではないか。

 そこで、その前提をいったん取り下げ、上記コメント中でも森先生が触れていた映画『ロスト・ハイウェイ』について考え直してみることにしました。

Re1-3 『ロスト・ハイウェイ』の影響を受けているのはどの部分か?

 さて、『ロスト・ハイウェイ』自体、難解な作品と言われ、ネット上では解釈が入り乱れているのですが、参考になりそうな文章がありました。2002年、次作『マルホランド・ドライブ』公開時に、監督自身が『ロスト・ハイウェイ』について言及したコメントです。

http://eiga.com/movie/1126/interview/2より

 あの映画のアイデアはテレビでO・J・シンプソンがゴルフをしているのを観たことから始まっている。この男は奥さんを殺したのに、どうしてこんなに楽しそうにゴルフなんかできるんだろうって思ったんだ。そこで僕は瞑想をしてシンプソンの気持ちになってみた。そうしたら理解できたんだ。彼は妻を殺した時の自分を記憶の中で別人格として分離しているに違いないってね。人格乖離、心因性記憶喪失というやつだ。シンプソンは自分の中で複雑に、しかし精緻に記憶を組み替えて殺人という現実から自分を守っているんだよ。その精神構造をそのまま映画化したのが僕の『ロスト・ハイウェイ』なんだ。

 このインタビューの内容をベースに、『ロスト・ハイウェイ』の粗筋を端的に記述するとたぶんこうなると思います。〈浮気していた妻を殺した男が、そのショックから記憶を改ざん、妄想の中で恋人とうまくやろうとするが、徐々に妄想の中にも妻の影が現れ始め、破たんする>

 そのままスカイ・クロラシリーズに当てはめようとするならば、<栗田を殺したショックで、草薙が記憶を組み替えて、カンナミになった妄想の世界に逃げ込んでいる>、とするのが素直な説ということになるのでしょう。しかし、それでは僕自身の5年前の考察とほぼ同じになってしまい、再考第1回で提起したカンナミの過去と草薙の過去が異なるという疑問点も解消されていません。今回はもう一歩、踏み込んで考えてみたいと思います。


Re1-4 『スカイ・クロラ』と『ロスト・ハイウェイ』の違い、仮説の提示

 『ロスト・ハイウェイ』では、妻の影や過去の記憶につながる事実がちらつき始めることで、主人公の中に元の人格が蘇り始めているように思われます。

 一方『スカイ・クロラ』では、カンナミは冒頭から"元の自分そのもの"といえる"草薙水素"とたびたび会話し、変化のきっかけとなったであろう栗田の死の噂もあちこちで聞きますが、それによってカンナミとしての自我は揺らいでいる様子はありません。また、再考第1回で考察したように、幼少時の記憶も異なるというのは、記憶の組み替え、分離だけでは説明がつかないように思えます。

 それでも敢えて同一人物説を推し進めるならば、記憶が創作され、まったく別のプロフィールの人間になっていることになります。そういう事例ということで一般に耳にするのは"多重人格障害"というやつです。つまり別人格に変化したのではなく、元の人格は維持したままで、別の人格を作り出してしまったと考えてみたらどうか?草薙としての人格が別に存在するからこそ、いくら草薙の記憶に触れても蘇りようがないのでは……?

  《仮説》
  『クロラ』の主人公カンナミは草薙の別人格なのではないか。


 そうすると作中、カンナミが草薙と会話しているシーンはどういうことになるでしょうか。『スカイ・クロラ』の中でカンナミが目にしている草薙の姿自体は幻覚であり、自分の内面で会話していることになります。カンナミはシーンによって無意識にカンナミの人格と草薙の人格を使い分けており、周囲の人間にとっては、カンナミこそが草薙の姿をしているわけです

 僕はここで、映画『ファイト・クラブ』を連想しました。別人格の自分と会話し、周囲の人間とも会っているのに、当人だけが多重人格に気づいていない。別人格を斃し受け入れるために、自分自身を銃で撃つ。戦いに生きる意味を求めるモチーフも含め、どことなく『スカイ・クロラ』と似ていないでしょうか。スカイ・クロラシリーズ全体が森博嗣版『ロスト・ハイウェイ』であるならば、『スカイ・クロラ』単体は森博嗣版『ファイト・クラブ』ともいえるのかもしれません。


Re1-5 『ジャイロスコープ』に関する仮解釈

 この仮説のもとでは、少なくとも『ジャイロスコープ』での矛盾が解消されることがわかります(※ここでの解釈は再考第6回で修正を加えているため、"仮"解釈としておきます)。

ジャイロスコープ仮解釈

 次回以降では、この仮説をベースに『スカイ・クロラ』作中シーンに関する検証や、時系列・舞台設定の再整理等をやってみたいと思います。

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● COMMENT ●

お久しぶりです

久しぶりにこちらにお寄りしたのですが、ブログを再開されたところだったのですね。
スカイ・クロラに夢中になったのはもう五年程前でしょうか。繰り返し読み込んだはずなのにかなり記憶が欠落してしまっています;
私自身では理論的な考察を組み上げるのが難しく、謎解きを諦めた作品ですが、今回新たに立てられたCroakさんの説を読んで「あっ」と思い出したのは、またしても萩尾望都作品でした。

構成の巧みさと完成度の高さから舞台劇向きだと思った「アロイス」という短編漫画です。実際舞台化されていたらしいですが。
多重人格、記憶の改竄、銃など、複数の素材が一致しますので、もしかしたら考察の一助になるかも知れません。

それにしてもCroakさんのスカイ・クロラ考察が更新されるとは、懐かしくも嬉しい限りです。私もまた読みたくなりました。

Re:

お久しぶりです。またコメントいただけて嬉しいです。

ブログについては、この考察シリーズの後どうするかはわかりませんが、少なくともあと数回は考察の続きを予定しています。気が向いたらまた続きを見に来ていただければと思います。

萩尾望都作品はしばらく前に選集的なものを買ったのですが、まだ全部読み切っていないんですよね。買った中に『アロイス』はなかったので、覚えておいて機会があったら手を出してみたいと思います。

はじめまして。
自分も読み返したのですが、まずダウンツヘブンのカンナミ少年は「煙草を吸わない」と想定できることと、クサナギは「煙草は吸うが酒に弱い(好きではない)」という部分からも、クロラのカンナミがクサナギであるヒントと考えてイイと思いました。

しかしそれらを加味してもクロラでの「トキノの前で上半身裸」描写など、外見的な要素で色々と想像を付け足さないと解釈に困る部分が多いですね(笑

Re:

コメントありがとうございます。
カンナミやクサナギの好き嫌いというか嗜好は、僕があまり着目していなかった点でした。そういう見方も面白いですね。今度読むとき見なおしてみます。

コメントいただいたのを機に本文読み返したら、非常に読みづらかったので少し文章直しました。続きも読んでいただければ幸いです。


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