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スカイ・クロラの謎 考察 第5回 - 2009.04.16 Thu


■考察5 スカイ・クロラの矛盾、あるいは、クレイドゥのその後(前編)

 前回までの考察をとりあえず事実であると考え、スカイ・クロラを読み始めると、その矛盾の多さに驚きます。しかし、森先生の著作に限ってはそれが作者のミスということは非常に考えにくいわけで、意図されたものと考えるべきでしょう。

 前回の考察でも述べた通り、「クレイドゥ」後の草薙水素は、自身を「カンナミ」と思い込んだ状態のまま、「記憶がどんどん希薄になり」、「人から聞いた話」「夢で見たこと」などが現実に混ざり合っている状態です。「クロラ」のエピローグは病院であることを考えると、「クロラ」で描かれている物語はカンナミ=草薙が自分の記憶であると思い込んでいる「妄想の混じった」回想と考えるのが妥当であると思います。

 森先生が以前「ダヴィンチ」の2008年8月号(no.172)にて「スカイ・クロラがデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』の影響を受けている」という内容の発言をされていた、ということも、この解釈に対して消極的な根拠にはなりそうですね(最近ネットで見つけた話なので、残念ながら私自身はそれを読んだことはありません)。夢オチに近いと言えなくもないですが、その中から、何が事実だったかを探るのもまた面白いかと思います。

1.スカイ・クロラの時系列と物語構造

 「クロラ」は公式で最終巻と位置づけられていますし、「カンナミ」の存在は「クレイドゥ」エピローグから連続しているように見えます。しかし、作中で重要なファクターとなる「栗田がいなくなって1週間後」というのは「クレイドゥ」よりも前の話になってしまいます。ただし、上述のように、「クロラ」が草薙の混濁した記憶に基づく回想であるとするならば、この点は問題なくなります。すなわち、

α.栗田がいなくなって1週間後(栗田が入院している間)、C基地の司令官として新任のパイロットを受け入れた記憶

β.「クレイドゥ」の後、「カンナミ」として女性司令官「クサナギ」のいるA基地に赴任した記憶

 の両者を混ぜ合わせたものがベースになっていると考えればよいかと。もっとも、それ以外にの「栗田から聞いた話」「フーコから聞いた話」などいろいろな要素が混ざっているとは思いますが。そんなわけで、「クロラ」に描かれている出来事がα、βどちらの時系列に属するか、あるいは単なる妄想なのか主要登場人物を通して考えてみたいと思います。

2.スカイ・クロラの登場人物~カンナミは実在したか?

 「クロラ」に登場するカンナミ=語り手は「クレイドゥ」以前の草薙と考えてよいと思いますが、はたして「函南」というパイロットは実在したのでしょうか?「カンナミ」が初登場したのは「ダウンツ」で草薙と会った入院中の少年という形でしたが、結局、彼が実在したのか、初めから草薙の夢の中だけの存在だったのかは明らかにされません。(注:この点について番外編その3で考察し直しました。 2010.3.22記)

 もうひとつ、「クロラ」でのカンナミについて記すことがあるとすれば、カンナミ=草薙はあくまで女性である、ということでしょうか。「クロラ」では、カンナミが男性でなければならないような表現はいくつかあります(トキノと同室、上半身裸で瑞季に対応している、フーコとの関係など)が、おそらくは栗田やフーコから聞いた話や、「クレイドゥ」でフーコと一緒のベッドに寝ていた際の記憶が混ざっていると思われます。

3.スカイ・クロラの登場人物~クサナギ氏は誰?

 β時系列での女性司令官(草薙の代役をしていた人物)がベースですが、「クロラ」での「クサナギ」の発言の一部には草薙自身の記憶がミックスされてしまっていると思われます。これはα時系列での草薙自身と境遇が似ていることが原因でしょう。便宜上ここでは彼女を「偽クサナギ」と呼ぶことにしましょう。

 「偽クサナギ」ですが、登場が唐突である割に、物語的には重要な人物と言えそうです。彼女がどういう人物か、手がかりになりそうなのは「クロラ」中盤のクサナギ、カンナミの会話でしょうか。カンナミ(草薙)がパイロットになって5年と言っているのに対し、偽クサナギはキルドレになって14年と言っています。

 これを事実と捉えるならば、草薙よりもずっと長く生きているキルドレということになります。前巻までに描かれてきた草薙水素よりも死にたがりの傾向が強いのはそのせいでしょう。草薙自身長く生きているほうですから、自分との共通点を見出し、惹かれるのもあり得ることではないかと思うのですが、どうでしょう?

4.スカイ・クロラの登場人物~「クサナギ」は「クリタ」を殺したか?

 基地で囁かれている「クサナギがクリタを撃った」という噂について考えてみましょう。作中の重要な要素と言えますので、こうした噂が流れたことは実際にあったことだと考えることにします。では、それはα時系列、β時系列どちらの出来事でしょうか?

 α時系列では栗田は基地からいなくなっているものの実際には入院しているだけ。そして草薙が基地のメンバーにそれを隠す理由はないでしょう。戻ってから簡単に説明くらいはしそうです。しかし、「クロラ」ラストで「クサナギ」は「クリタ」を殺したことが事実だと認め、「彼が好きだった?」という質問を肯定します。ここで感じ取れる恋愛的なニュアンスを考えてもフラッタでの草薙と栗田にはあてはまらない気がします。

 となると、β時系列の偽クサナギが恋愛関係にあった「カンナミの前任者」を殺したと考えるのが筋が通るのではないでしょうか。それが「クリタ」の話になっているのは、無意識下で栗田を撃ったことを覚えている草薙(カンナミ)の中での記憶の改竄によるものでしょう。ここでの記憶の混濁が、「クロラ」でβ時系列とα時系列が混ざってしまった原因と思われます。

 また、考察4で述べた「スピッツ・ファイア」での出来事は、偽クサナギとA基地に着任したばかりの「カンナミの前任者」が接近するきっかけのエピソードだと考えるとしっくりくる気がします。ここでの「女」を感じさせるクサナギの描写は、一貫して少年的な草薙水素より、むしろ「クロラ」の偽クサナギに近そうです。


 主要登場人物と物語の大きな構造について考察してみました。ここまでの考察により、クロラの物語自体は、β時系列、すなわちクレイドゥの後の物語が中心であると考えてよいでしょう。クリタという名前で混乱させられますが、偽クサナギが殺した相手が「栗田仁朗」でないということを前提とすれば、かなり物語はわかりやすくなります。

 次回、脇役たちについても考察した後、纏めてみたいと思います。

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● COMMENT ●

通りすがりですが言わせて下さい。
ここまで腑に落ちる考察は初めてです。
毎回、とても楽しみに読ませて頂いてます。
次回、期待しています!

Re:

コメントありがとうございます。

そう言っていただけると励みになります。

「この小説に合理的な解説をつけようとするのは無粋なんじゃないか」と思いつつ、大好きな小説なので、ついつい色々考えてしまうんですよね。

ひとつの記事を更新するのにやたら時間がかかってしまっているのですが、是非、次回も読んでいただけると嬉しいです。


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