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スカイ・クロラの謎 考察 第6回 - 2009.04.16 Thu


■考察6 スカイ・クロラの矛盾、あるいは、クレイドゥのその後(後編)

 前回考察した、物語の流れさえ把握しておけば、あとは草薙の妄想として処理してしまってもいいかもしれませんが、それでは味気ないので考察しておきましょう。

5.スカイ・クロラの登場人物~トキノとフーコ
 この二人の描写については、そのまま受け取ると、最も矛盾が多いです。

 土岐野は草薙がC基地からいなくなった後もC基地に残っている(アース・ボーン考察参照)ため、β時系列ではA基地にはいないはずですし、フーコも「クレイドゥ」後に館を辞めていますから、同様にβ時系列では本来登場することができません。

 ただし、α時系列の頃、草薙がフーコとある程度親しくなっていることは「クレイドゥ」で明らかですから、カンナミとフーコのやりとりには草薙自身が経験したことも含まれてはいるでしょう。「クロラ」におけるフーコの登場場面に関しては、前後の場面と連続して捉えるより、断片的な記憶が混ざっていると考えた方が辻褄が合いそうです。

 草薙がフーコと親密になった経緯についても考えてみましょう。以前草薙は、比嘉沢が死んでしばらくの間、彼女の思考をなぞろうとする癖がありました。飛べなくなって不安定な精神状態で、栗田の思考をトレースしようとした結果、フーコの館を訪れた可能性はあるかもしれません。……と理屈っぽく考えてみましたが、カフェか何かでフーコと会った際に栗田のことを聞かれたと考えた方が素直という気も(苦笑)

 一方、トキノに関しては、「新任パイロットと同室である」「新任パイロットをフーコの館に案内する」という部分だけがα時系列の土岐野で、それ以外はβ時系列でカンナミとチームを組んでいた別のパイロットを「トキノ」として記憶してしまっていると考えるべきではないかと思います。
 
6.スカイ・クロラの登場人物~ササクラとクサナギ・ミズキ
 笹倉と草薙瑞季は、α・β両方の時系列で「本物として」存在し得る人間です。

 瑞季の出番は1回きりですが、まず本物と考えてよいでしょう。これがα、βどちらの時系列に属するかについてですが、β時系列と考えたいと思います。カンナミに対して妙に気やすいところから、記憶をなくした「姉」に会いにきたと想像します。偽クサナギは仕方なくその監督役をしているといったところでしょうか。

 笹倉についてですが、α・β両方の時系列で本人と考えます。違和感を感じる描写もありますので、考察してみることにします。

①本人っぽい描写
・凄腕のメカニック。
・フラッタで栗田に依頼された息継ぎの改造をカンナミの機体に施す。
・カンナミに対し親しげ。偽クサナギに対しては距離を置いている。
・冒頭「それ、誰に教わった」→記憶をなくしたカンナミを試しているように思われる。

②違和感を感じる描写
・初対面時「まだ若そうだ」という印象→笹倉と初対面時の記憶が混ざっている?
・「クサナギ」に対し頬を赤らめる描写→偽クサナギを女性として意識している?
・トキノの「瑞季=娘」説に賛同している。→これまで瑞季と会ったことがない上に、偽クサナギが彼女を連れている姿だけから判断すれば、そう見えるのかも?

7.スカイ・クロラの登場人物~甲斐の不在

 クロラには、これまで草薙の上司であった甲斐の姿がありません。

 甲斐の登場は、クレイドゥの後半、味方機を撃ち墜とした際に迎えに来たのが最後です。会社は責任問題を回避するため、対外的には偽クサナギを用意し「緊急事態であった」ということにしたのでしょうが、内部での責任問題もあったはずです。

 クレイドゥエピローグでも甲斐が登場していないことを考えるに、草薙の担当から外された、あるいは情報部を辞めることになったというのが妥当な線かと思います。「ドール・グローリィ」で、軍を辞めた草薙の面倒を見ているのが彼女であることを考えると、結構泣ける裏ストーリーになるかも(妄想)。


 以上のことを踏まえて、時系列別に纏めてみましょう。α時系列を水色、β時系列を黄色で表示。

初冬栗田が撃たれた事件で危険に晒された草薙に対し、今後司令官任務に徹するよう命令が下される。
草薙、フーコと親しくなる。
C基地に新任のパイロットが配属され、土岐野と同室になる。
大規模な戦闘(曇天)。栗田の機体と遭遇した可能性あり。
草薙、病院を抜け出した栗田を追い、彼を射殺。
杣中にそれを話した後、草薙は入院。会社は草薙の死亡を発表。
同年 冬 病院の草薙の元に、裁判中の相良が訪ねてくる。
相良の注射により、草薙はキルドレに戻る。
翌年 初春 病院を抜け出した草薙は、相良の元に身を寄せる。(「クレイドゥ」)
非武装地域の戦闘にて草薙は4機を撃墜し、その後相良を射殺。
草薙、「カンナミ」としてパイロットに復帰する。
甲斐は担当を外される。
この頃、笹倉がA基地に移動になっている?
偽クサナギがA基地(=兎離洲)に配属される。
A基地に新任のパイロットが配属され、偽クサナギと親密になる。
初秋偽クサナギが彼を射殺、基地にはそれに関する噂が流れる。
カンナミ(草薙)、A基地へ転属、偽クサナギに会う。
爆撃機襲来、偽クサナギは北の観測所へ抗議に行く。
カンナミのもとを、草薙瑞季が訪れる。
晩秋基地に見学者。ログハウスで偽クサナギと食事。2日後湯田川が墜ちる。
初冬基地の移動、大規模な戦闘(晴天)。
A基地に戻る。
カンナミ、偽クサナギを撃つ。彼女は死亡、カンナミは再入院。
カンナミは混濁した意識の中で過去を再構築する。(「クロラ」)
その後カンナミは、約10年に渡って入院生活を送ることになる。(「イクリプス」)
キルドレを人間に戻す方法が発見される。草薙もその治療を受け、回復する。
約10年後、退院した草薙はフーコに会いに行く。

 「クロラ」における大規模な戦闘が「フラッタ」でのものと同じかどうか大分悩まされましたが、空模様の記載があったので、別物と判断しました(地域が違えば、天候も異なる可能性はありますが)。

 こうしてみると、割とシンプルに説明がついてしまったと言えなくもないような……。もっとも個人的にはまだ、いくつか引っかかっているところが残ってはいます。偽クサナギが草薙に外見が似ているという解釈が、この作品の世界観からずれている気がすることが、最もしっくり来ていない部分ですかね。

 とりあえず、以上をもって、スカイ・クロラシリーズ考察はいったん完結としたいと思います。読みにくいレイアウトを直したり、あるいは、何か思いついたら追加記事を書いたりということもあるかもしれませんが。

 長文にも関わらず、ここまでお付き合いいただいた方、本当にありがとうございます!

Sky Crawlers TOPへ

● COMMENT ●

とても参考になります。

初めまして。最近になって『スカイ・クロラ』シリーズを一気読みし、『クレイドゥ・ザ・スカイ』で大混乱を起こした挙句、答えを求めてネットの海を放浪した挙句、このサイトにたどり着きました。

こちらでは物語中の事項を時系列に分けて考察されておられるので解り易く、また説得力もありますね。おかげで最近までクリタの体に何らかの形でクサナギを植え付けた人格が「カンナミ」ということでつけようとした収拾が奇麗に覆されてしまいました(笑)。

まず作者が記憶の移植を否定している上に、何よりも『性別』がネックでだったのですが成る程、クサナギ=カンナミのほうが収まりがいいですね。
もしかしてサガラはクサナギをキルドレに戻す方法として、ホルモン剤のようなものを投与して男性化を促したのでしょうか。戦闘機に乗れるようにはなるかもしれないが、記憶や外見が変えられてしまうかも、とも言っていたことから、クローン技術は否定されていても現実的な外科的整形・性転換手術の可能性はある世界だとも思います。……時間がかかりそうなのが弱点ですが(汗)。

クリタを捜索していたクサナギが幼い瑞希を連れていたのが解せなかったのですが、もしやこの3人は身内?…偽クサナギを仮に「クサナギ」の姉として、クサナギ姉とクリタの間に生まれたのが「瑞希」…う~ん、三ツ矢の「キルドレが生まれ始めて20年」発言は妄想だったのか?だの、読み込めば読み込むほど謎が噴出してきます(汗)。
挙句、「草薙水素」という、些か下心の見え隠れするネーミングのせいで、『攻殻機動隊』における「記憶の並列化」が浮かんだ末に、頭の中でキルドレ達が青い色したクモ型ロボットに自動変換されて歌い踊り始めてしまったりもしました(笑)。
劇場版も視聴してみましたが、この作品は『小説』という媒体だからこそ生きる設定であるので、映像化に当ってはどうしても設定の変更は仕方がないことなのでしょうね。

登場人物の年齢、容貌、時間の経過さえもはっきりとは描写されておらず、読者は各々勝手に推測するしかない構造になっているため、さぞかし様々な説が飛び交っていることでしょう(人のことは言えませんが…)。
著者は大学で教鞭を取っておられた方のようですが、さぞ楽しくも意地の悪い授業をされていたんではないでしょうか。
ともすれば鬱々とした内容になりがちな題材であるにも関わらず、透明で美しく、純粋な『キルドレたちの物語』に出会えて幸運だったと思います。

救い、というものとは違うと思いますが、最後に発行された『スカイ・イクリプス』中の一篇『スカイ・アッシュ』によって、彼らの存在は暖かな光の中に昇華されたような気がします。

思わず長文になってしまいましたが、これにて失礼いたします。

Re:

読んでいただきありがとうございます。
コメントいただいたので久しぶりに自分の記事を読み返したら、自分の文章の読みにくさに絶望しました(笑)。

コメントいただいた内容について僕なりの考えを書かせていただきますね。

 スカイ・アッシュで「彼女」表記なので性転換等はなしと考えて良いと思います(流石に2度性転換は不自然な気がするので)。「クロラ」での男性っぽい表現はあくまで草薙が自身で改竄してしまった記憶によるものかと。

 瑞季の立場はフラッタで栗田に語った「草薙の異母妹」ということで単純にいいと思いますよ。栗田捜索時に瑞季を連れていたのは、ドール・グローリィで瑞季自身が推測している理由(=瑞季を栗田にもう一度会わせたかった)でいいと思います。おそらくフラッタで栗田と会った瑞季が、姉にそのことを好意的に話していたんではないでしょうか。

 森先生は他の作品でも社会通念と異なる立場を取る登場人物たちをよく描いていて、ミステリィなどでの逆説的で台詞回しは刺激的・知的で面白いのですが、単なる言葉遊び以上に、その根底に少数者への優しい視点があるような気がします。それがこのシリーズでの透明感とかキルドレの純粋さにつながっているんじゃないかと勝手に思っています。

度々失礼します

すみません、先日コメント欄の扱いがよく解らずHNが掲載されていませんでしたね。あらためまして、「チルハナ」と申します。

いきなり長文の、しかもとんでもない“考察もどき”に丁寧なご返答ありがとうございます。
ところで、森博嗣氏はもしかして萩尾望都氏のファンなのでしょうか。同氏の過去作品に「一角獣種」という遺伝子操作によって生み出された人種を題材にした作品が2,3あるのですが、少しばかり『キルドレ』を思わせるところがあるもので。

吸血鬼や火星人等、全盛期にはとても魅力のある“常人ならざる者”を生み出し、後続の作家に並々ならぬ影響を与えておられる女性漫画作家で、実は性転換云々も、同氏の作品が頭にあったために思いついたものだったりします。

そういえば劇場版『スカイ・クロラ』も、萩尾氏の『A-A'』を思わせる結末でしたので、もしかしたら監督は、同氏の作品読みたさに少女漫画誌をコソコソ購入していた世代の男性かもしれませんね。

僕もwikipediaでしか知らないのですが、森先生は萩尾望都さんの大ファンだそうですよ。。なので、チルハナさんのおっしゃったキルドレの設定についての類似性はたぶん正解なんじゃないでしょうか。

僕は萩尾望都作品は大昔に『トーマの心臓』と『ポーの一族(の最初の方)』を読んだだけなのですが、ちょっと改めて興味を持ちました。機会があれば、ちゃんと読んでみますね。

そういえば、森博嗣作品の中で「100年シリーズ」というのがあるのですが、往年の少女マンガSFの雰囲気に似ていたかも。

すごいです!!

はじめまして
私もこのシリーズが謎だったのですが、
①スカイ・クロラでカンナミとクサナギが食事をするのは相良の家だったところ
②ナバデアに登場する相良医師二人=相良あおいの父、兄
というのはあっていますか?
いろいろ調べてもやっぱり難しくて…
このサイトが一番わかりやすいです。
またお世話になると思います

Re:

こんにちは~

 ここで書いてるのは僕の解釈なので正解かはわからないのですが、②は多分そうだろうと思っています。血縁関係なのは間違いないかな、と。父・兄が伯父・従兄弟じゃないという証拠もないので、この辺りはあくまで想像ですね。相良亜緒衣はそうした家族環境や草薙水素の存在がきっかけでキルドレの研究を始めたのだろうと勝手に解釈してます。

 ①は僕は別の場所だろうと考えています。考察2に書いたのですが、フラッタ・リンツ・ライフの舞台である基地(=相良の家の近く)とスカイ・クロラの舞台である基地は別との考えからです。

 スカイクロラの記事は読んでくれる人が多くて嬉しいです。何か気づいたこととかあったら、またコメントくださいませー

ドキドキしながら読ませて頂きました。
分かりやすいですし!

…と良いながらすみません、ひとつだけ(とはいえだいぶデカイ)
質問をしたいのですが、
ナバテア•ダウンツの水素さんだけを追いかけて読むとすれば、
どう読めば良いんでしょうか?

ここを読ませていただいて、だいぶ浅~く読んでいたな、と
反省中ですw 特にカンナミ…
こんなに読み落としてたなんて… 半分以上かも 笑
もう一周読まなくては!(>_<)←無限ループ

では、すみません、失礼しました
もう一周読んで、また解説全て読もうと思いまm(_ _)m

Re:

 こんにちは。読んでいただきありがとうございます。

 質問の意図が汲み取れていなかったらごめんなさい。ナバテア・ダウンツでは一人称の「僕」はずっと草薙水素本人ですので、複雑に考えずに読んでもいいのではないでしょうか。ナバテアではティーチャや比嘉澤との関係性がメインに、ダウンツでは只のパイロットでなくなりつつある水素自身の葛藤がメインになっている印象があります。

 あと、番外その3でのカンナミについての考察は、僕の想像で補っている部分が強いので、ひとつの意見として読んでいただいたほうがいいかもです。

 聞きたかったこととずれてたら、またコメントくださいませ。

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