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[名作アニメレビュー] シムーン - 2009.04.24 Fri

 見事な「物語」だと思う。ファンタジーとして、SFとして、青春群像劇として。いくつもの絡み合う糸がひとつになって行く様は、よく出来た小説を読む感覚に近い。

 その世界では、すべてのヒトが女性として生まれ、17歳になったら自分で男女の性別を選ぶことができる。そして空を自由に飛ぶ古代機械シムーンを操ることができるのは、まだ男女に分かれる前の「巫女」だけだった。しかし、隣国との戦争の激化により、シムーンは兵器として使われるようになるのだった―――。

作   品   名 総合評価 テーマ
構 成
脚 本
キャラクタ
動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
シムーン 8.8 10 10 10
→2006年アニメランキングはこちら

 科学技術を目的にした戦争。宗教対立、神への愛、神とは何か?―――。こんなメディア的に苦手そうなテーマを、架空の世界が舞台とは言え、よく描いたもんだ、と思います。もっとも一番は「少女であること、とは何か」というロマンティックなテーマを描くことでしょう。

 専門用語の説明が多い上に登場人物が多いわ、ヒロインの片割れは引きこもってるわ(笑)でどうなるかと思った序盤から急速に化けていった印象があります。第1部終了と言える第9話の頃には、もうすっかりこの世界観に引き込まれていました。

 放映当時は、あまり話題にならなかったようですが、どうもプロモーションの仕方に問題があったんじゃないかと。公式サイトを初め、萌えと百合を露骨に意識しているように感じられますが、作品自体は正統派なSFであり、極めてドラマ性の高いファンタジーでもあります。たぶんもっと多くの人が楽しめる作品だったはずなのになぁ、と非常に残念でなりません。

 また面白い試みとして、「皆、かつては少女だった」という設定を生かすために、大人の男性にも女性声優を使うという徹底ぶり。最初こそ違和感がありましたが、慣れてくると、この世界観はこれでなければ、という気がしてくるから不思議。繊細なキャラクターの微妙な心情を表現する脚本も素晴らしく、多数の登場人物たちは皆それぞれ魅力的。個人的にはワポーリフとモリナスのコンビが印象に残っています。

 他に特筆すべきことが2点。ひとつは古代飛行機械「シムーン」のデザイン。巨大なアンモナイトのような有機的な機体が空を翔る様は幻想的で美しいです。もう一つは音楽。佐橋俊彦によるタンゴとワルツのリズムを多用したBGMが、作品のロマンティックな部分にマッチしていて◎。

 ベストエピソード感想は続きにて。
ネタバレ注意!
■第1話 墜ちた翼
■第2話 青い泉

 この2話が世界観導入編。また主要登場人物の性格もなんとなくわかります。 初見時にはスルーしてしまいそうですが、作品の核心に近いような発言もかなり存在します。

「強くなりたい・・・強くなりたいのよ、ネヴィリル。こんなのは嫌・・・。色んなものが私たちを邪魔する。私たちの翼を奪おうとする。そう、戦わなければいけないのよ。だから強くなりたいの。わかるでしょ、ネヴィリル?私たちならできる!」

 ここでの「強くなりたい」がいわゆる少年マンガ的な強さとは一線を画していて、「心の強さ」すなわち「より純粋であること」を指向しています。

   第12話でのネヴィリルの発言「お互い強くなれたときにこそ、本当の意味で抱きしめ合える」や、第25話でのネヴィリル・パライエッタのダンスシーンの会話ともリンクしていく台詞でした。

 また、2話ラストのエリーの慟哭も強いインパクトを残します。泉で性別を選ぶという設定のSF的な面白さもありますが、それ以上に「大人になる」ことにおける、正体不明の喪失感を強く感じさせるシーンです。僕にとっては、この作品を見続けることを決定付けたシーンかも。

 また、物語の主人公たるアーエルのキャラクターも興味を引きます。女の子っぽい外見と男っぽい喋りというキャスティングの妙もあるとは思いますが、まったく空気を読まず、核心を突いた台詞をズバズバ言ってくれます。

「じゃあ、あんたたちは、男になるか女になるか、もう決まってるわけ?」
「空の祈りがテンプスパティウムのためでなく、戦争のためになったから?関係ないな」
「でも、今は大聖廟の方で泉に行かなくていいって言ってくれる。・・・戦争に勝っている限り」
■第8話 祈り
■第9話 審問

 第1部のクライマックス。

 アングラスの自爆と最後の「アーエル」という叫び。アーエルは嶺国の言葉で「最上の愛・神への愛」の意味という。この話の段階では、アーエルの名前はそこから取ったのか、と思ったりしたものだが、作品最後まで見ていくと、実は逆らしいことがわかりますね(SFならではの伏線!)。

 ネヴィリルに問われ、初めて迷いを口にするアーエル。その迷いに、自分との相似を見出すネヴィリル。

「私も迷ってる、巫女であること、戦いに出ると言うこと・・・それが本当に正しいことか。あなたと私は何から何までまるで違う・・・でも、ひとつだけ同じ。立ちなさい、アーエル。私があなたのパルよ」

おそらくこれまでのネヴィリルは、迷っている自分が、迷いのない他の仲間と一緒に飛ぶことに罪悪感があったのだろうと思います。

 そして、審問会でのネヴィリル。おそらく作中一二を争う名シーン。

「私たちはテンプスパティウムに仕える巫女、シビュラとして、シムーンの声を聴き、空にリ・マージョンを描いてきました。そして、我がシムラークルム宮国に侵入する隣国の兵士を数多く殺してきました。それは、殺戮と言ってよいものでした。~(中略)~

 私はこの戦いの日々を誰かのせいにしたいのではありません。今がいかに苦しく辛くとも、そうなるべくしてなったのだと。それがテンプスパティウムの意思なのかさえ、今の私にとってはどちらでもよいのです。今の私には神の意思さえ、どうでもよいのです。ただ、これだけは皆様にお聞きします。それでも私は、今でもシムーン・シビュラなのでしょうか?」

 「巫女であり、兵士であることを求める」大人たちに、矛盾を突きつけるカッコいいシーンですが、ここでネヴィリルが提示した「シヴュラとは何なのか?」という疑問は、物語全体の「少女であること、とは何か?」というテーマにリンクしていきます。

 だから、ここでのオナシアの「あなたがそう望む限り、それでもあなたはシムーン・シビュラなのです。」という答えは、物語全体に関する「ひとつの」答えではあると思います。同様の内容は終盤このシーンを回想するグラギエフ・アヌビトゥフの会話からも読み取れますね。

■第15話 一人、また一人
■第16話 翠玉のリ・マージョン

 第2部クライマックス。静かに緊張感が高まる第15話。戦況の緊張感と、人間関係の緊張感の高まりが同時に起こっていくのが巧い。

 第10話からの第2部では、各登場人物を掘り下げるエピソードが多いですが、これまで積み上げてきた人間関係の描写が噛み合い始め、本筋が動いていくところが非常に面白いですね。この作品の凄いところは、数の多い登場人物たちがちゃんと生身の人間っぽいリアリティがあるところ。会話を聞いていても、ああ、この子はそういう子だよね、という納得感があります。

 リモネとドミヌーラの関係性がここでの鍵。リモネはわかりにくいですね。「必要だよ。私、翠玉のリマージョンしたい。ドミヌーラとしたい」とドミヌーラを励ます一方、アーエルにはドミヌーラが「死ぬ」だろうと淡々と告げる。そこにあるのは、果たして諦めなのか、感情を処理しきれない揺らぎなのか。

 翠玉のリ・マージョンとシムーン自体に関する大きな謎が提示され、物語は第3部に移っていきます。


「私たちは似ているわ―――私はあなたを選んだ。あなたは私を選んだ。その繋がりこそがリ・マージョンならば、私はあなたのために描く……翠玉のリ・マージョンを」

「その恐怖の先にわずかに見えたもの、それが怖いのよ。言葉には出来ない、でも敢えて名づけるなら……希望……」
■第25話 パル
■第26話 彼女達の肖像

 結末についてはあまり語りたくないのですが……、いくつか。

 第25話で泉に入る前の彼女たちの台詞っぽくない台詞。連続した詩のようでもありますが、いきなり聞くと意味がわかりません。こんなのが成立してしまうのが、この作品の凄さなのかも。


「私たちは誰もお互いのことを何も知らない。だが、それを知るために私たちは墜ちていく。墜ちてゆかなきゃならない。大声で叫びながら、恐怖で口からとびだしそうになる内臓を押さえ込んで。どこまでも、どこまでも。」

「そしてどっかで墜ちるのが怖くなって途中の何かを掴んでぶら下がろうとするんだ。 でも、その手を離さなきゃいけないんだね。」

「その奈落のそこにきっと僕がいる」

 エピローグと回想で構成される第26話。旅立つふたり、「皆、少女だった」、そしてリモネが見上げる空、「アー・エル――最上の愛」という呟きに至るまでの流れは、音楽と相まってまさに鳥肌モノでした。

 ラストのふたりのダンスのシーンは、それ自体が非常に象徴的でした。壮大なスケールでありながら、なんとも心に近いところに残る美しい映像。


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