[名作アニメレビュー] true tears - 2009.12.13 Sun

 この作品を見たのは本放送が終わった後でした。学園恋愛ドラマというのは、アニメではなかなか見る気がおきないでいたジャンルだったのですが、ネットでの評判の高さ、それに当時「シムーン」を既に見ていた自分にとって監督西村純二・脚本岡田麿里というコンビはそれだけで期待感が持てるものだったからです。結果、最終話まで一気に見てしまいました。


 絵本作家を目指す主人公・仲上眞一郎はある日、涙を流せなくなった少女石動乃絵と出会う。変わり者と評される彼女の動きが眞一郎の周囲の人間関係を静かに、しかし確実に動かしていく。富山県南砺市城端地区という実際の街並を舞台に、心情描写重視の群像劇を描く物語。

作   品   名 総合評価 テーマ
構 成
脚 本
キャラクタ
動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
true tears 8.2 10
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 原案がゲームということですが、「主人公が複数の女性にモテる」という点以外にそれを感じさせる要素はありません。

 フィクション(特にゲーム原作モノ)においては共学の学校での男子女子の仲の良さが嘘っぽいなぁと思ったりするのですが、この作品では男女の間に徹底的な距離感があります。大学生ならともかく中高生ってこうだと思うんですよね(主観ですが)。決してすぐ仲良くなったりしない、その距離感・緊張感の表現がこの作品の肝だと思います。



 その点に注目するとキャラクター設定もかなり納得。通常と違う価値観で動いているが故に一方的にその距離を壊してくれる乃絵。物理的距離が近いが故に却って不自然な距離感になってしまっている比呂美。主人公の幼馴染であるが故に元々心的距離感の近い愛子。

 3人のヒロインが、主人公との距離感においては初めから物語内で特別な設定を与えられているんですよね。だからこそ冒頭に書いた「主人公がモテる」という点でもあまり不自然さは感じませんでした。

 そういえば、乃絵って最初の印象は「イエスタデイをうたって」のハルだったんですけど、物語の立ち位置的には「シムーン」のアーエルとも被りますね。こうした人物を投入して群像劇を動かしていくのは西村監督作品の特徴なのかも。



 絵の見所も多いです。少し霧がかかったような背景美術はとても美しく、まさに北陸の涼やかな空気感にぴったり。何より、それらを印象付ける演出が優れていると感じました。何気ないシーンで、人物からカメラを外し背景や外の景色に視点が切り替わる。それらは会話の間にもなっていて、流れている時間が東京とは違う、少しゆったりと感じられる気がします。



 また、脚本の方でも各話の引きが強烈。先が気になります。変わり者として設定されている乃絵はともかく、他のヒロインたちや主人公にも印象的な台詞が多くあります。普通にいそうなのにキャラが立っているのは見事。あ、冷静に考えると主人公も相当に変なやつかもしれません(笑)。

 恋愛モノとしてベタな要素も取り入れつつ、全体としてありがちじゃない青春群像劇になっていると感じるのは、これらの脚本や演出によるところが大きいと思います。まぁ、視聴者の予想を裏切るために、終盤の展開がやや強引だったり、やりすぎかな、と思える展開もあるのですが。全体的には成功しているんじゃないかと思います。一見の価値ありです。




[名作アニメレビュー] 灰羽連盟 - 2009.08.25 Tue

 極めてプラトニックなファンタジー。映像作品や小説の中には、「あー面白かったー!」「これは神!」と騒ぐより、何となく静かに受け取って心の片隅にしまっておきたくなる作品がありますが、これもその1つ。


 背中に灰色の羽、頭に光輪をもつ「灰羽」と普通の人間が共存する「グリの街」。灰羽の新生子ラッカは、そこでの仲間たちとの暮らしに幸せを見出す。しかし、そこは決して楽園ではなかった―――。

作   品   名 総合評価 テーマ
構 成
脚 本
キャラクタ
動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
灰羽連盟 8.8 10 10
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   前半、スタジオジブリアニメを連想させるほのぼのファンタジーっぽく始まりますが、この作品の本質は後半、ある少女の罪と救いをテーマにした物語。原案である安倍吉俊先生の個人的な体験がベースになっているということですが、見事に普遍性を持った物語に昇華していると思いました。

 ここで描かれる救いの形自体は、できた大人(or強い人)にとっては「弱さ」「甘さ」と捉えてしまう類のもの。しかし、そこで描かれる痛みは多くの人が一度くらいは感じたことのある感情だと思いますし、現在進行形で感じている人もいることでしょう。だから、正面きってその「弱さ」と向かい合い決着をつけたこの作品のラストに、僕は感動しましたし、凄いと思います。

 …とまあ、こんなことを思い入れたっぷりに書いてる時点で、僕が「できた大人」じゃないことをカミングアウトしてるも同然なわけですが(汗)。それは置いておきつつ、とにもかくにもこの作品、もっと多くの人に知って欲しい作品です。



 この作品の魅力のひとつに世界観の作りこみがあります。そもそも天使をモチーフにした「灰羽」ですが、羽は生々しく背中から生えてきます(このシーンは圧巻!)し、光輪は鋳型で焼いて作ります。第1話でこれらのシーンを見て、僕はこの作品が只者ではないぞ、と思い、見続けることを決めました。

 この後も羽が寝るとき邪魔になったり、冬は手袋ならぬ羽袋をつけたりと、生活感を感じさせる設定が満載。ファンタジーでの定型を外すようなそれらの設定は、作品世界をより身近に感じさせてくれます。一方、安倍吉俊先生の原案絵のイメージを活かした背景美術は独特の色彩で美しく、こちらに関してはまさにファンタジー作品はかくあるべき!、と感じさせるもの。

 音楽も印象的な使われ方をしています。大谷幸さんはかなりたくさんの作品を手がけていますが、僕にとってはこの作品のアコースティックな音楽が最も印象的。作中で流れるピアノのテーマ「Ailes Grises」はあまりに作品と結びついていて、聴くだけでじわっときます。



 この作品で唯一欠点を挙げるとするなら、ところどころ尺が足りない感じを受けるところでしょうか。特に気になったのは最終話のいくつかのシーンで、余韻を感じさせる前に場面が切り替わってしまうところ。何かこう、号泣の一歩手前でストップかけられているような感覚だったり。

 一視聴者の意見ではありますがもし、ブルーレイで出しなおすことがあるなら、最終話だけでも尺調整して1~2分伸ばして欲しいところ。先日発表されたserial experiments lainのBD-BOXはかなり手が入っているらしいですし。いや、そうでなくともブルーレイ出たら多分買いますけど。ジェネオンさん、是非是非よろしくお願いします。


 続き↓にて、この作品について考察してみたいと思います。

[Anime] ストロベリー・パニック感想~「マリみて」と比べてみた~ - 2009.07.24 Fri

 このブログには名作アニメレビューというコーナーを設けているのだけど、堅苦しくレビューしようとすると、時間的に結構しんどい。というわけで、今後は簡易的な感想や批評も少しずつ書いていくことにしたいと思います。

 で、第一弾がコレというのもどうかという気はしますが。見終わったばかりの新鮮なうちに、ストロベリー・パニックの感想いってみますか。若干のネタバレあります。

 ええと、まずこの作品はいわゆる「百合モノ」に属するわけで、「マリア様がみてる」よりも関係性はディープ、ただし、コメディタッチでライトな部分もあるので、その辺は(キャラ萌えメインの人にも)見やすいように配慮されているんでしょう。で、「マリみて」と比べてみるとわかりやすいかなと思ったんで、比べてみた。


まず、共通点。

①メインのシナリオ

 「いばらの森」「片手だけつないで」と被ってます。すなわち「佐藤聖→花園静馬、久保栞→桜木花織、藤堂志摩子→蒼井渚、水野蓉子→六条深雪」という立ち位置はそっくり。というか渚・志摩子以外は外見も似てるよね。何となく。

②温室、ピアノの連弾、歌といった小道具

 まあ様式美の範疇とも言えます。背景はストパニの方が全般に美しく雰囲気があったと思います。ただ、音楽関係…ピアノや歌の扱いはマリみての方が丁寧でした。正直、ピアノ弾く際の変な腕の動きと鳴っている音のちぐはぐさはキツかった。せめて連弾の音を鳴らして欲しい…。あと、合唱部なのに変な場所でブレスいれないでくれ…。実に気になる。

 といったところ。


逆に違うのが、

①百合に関する扱い

 マリみては、あくまで恋愛は男女の恋愛が基本だし、恋愛と呼べるかどうか微妙なプラトニックな関係しか描かれない。それが魅力でもありました。アニメ版はキャラクターデザインからして色気皆無だし(笑)。

 ストパニでは、女性同士は始めから恋愛対象。しかもその先にキスや肉体関係があるという価値観が、作中登場人物にとって結構普通に受け入れられてます。文学的にいうと耽美的、端的にいうとエロい描写が存在する。普通にキスで終わりかと思いきや、場面が変わったらコトが終わった後という描写はびびりました。え…マジっすか、置いてけぼりー?みたいな(笑)。

②ネタっぽいキャラの存在

 まずはこれを引用せざるをえない。以下、作中、剣城要のシリアスな口説き文句

 「たとえば「地球温暖化」だ。 CO2排出量増加による地球温暖化は常識だね? (中略) だが、実はCO2が地球温暖化の原因だという証拠は無いんだよ。 (中略) つまり常識を疑えということだ。」

 自称口下手とは言え、もうちょい文脈読もうよ(笑)。序盤の彼女は只の馬鹿っぽい悪役かと思ってまして微妙さを感じていたんですが、ここは爆笑でした。まさかここまで面白い人だとは。他にもデコばっかり印象に残ってる冬森会長とか、回によってはギャグ担当としか思えない(笑)。

 ただ、これだけは書いておきたいのですが、彼らがただのネタキャラで終わらず、最終的に物語中でちゃんと役割を与えられているところは、この作品の丁寧なつくりを表している点でもあるかと。

③作中、学園外の描写がほとんど存在しない。

 これは見終わってから気づきました。家族は登場せず、ずっと寮生活。夏休みも主人公と主要登場人物は家に帰らず。学園外に出たのは、サマースクールのバスの中と静馬の別荘に向かう二人きりの車の中だけ。しかも両方とも主人公は沈んでいて心理的に閉じた状態。徹底的にどこか閉鎖された場所で、すべてのストーリーが進行します。

 これはマリみてとの相違というより、全てのアニメ作品の中でも珍しい部類。思いつくのはウテナくらいしかないです。ウテナでは最終回、アンシーが解放され外の世界に出るシーンのカタルシスを強調することが目的だったでしょう。ところが、ストパニでは、最終回、静馬に連れ出され逃亡した渚が、その夜に寮の部屋へ帰ってくるところで幕を閉じます。

 初見時には、「非常にファンタジー度の強い作風なのに、最後に日常回帰とはこれいかに?」と思ったんですが、おそらく逆でしょうね。

 この作品はあくまで学園という「箱庭」の中にしか存在しない物語でした。渚が静馬とともに外の世界に逃亡してしまったら、そこでは彼らの関係性もまた存在し得ないということでしょう。だからエピローグでも日常回帰ではなく、たぶんファンタジーの箱庭への回帰なのだと思います。

 その意味では視聴者に対し、「これはあくまでファンタジーだから」と線引きしているようで、シュールかも。深読みしすぎか?



 あれ、簡易感想のはずだったのに、いつのまにかマジメな批評に・・・。時間掛けすぎてるし。

 あ、個人的なお気に入りキャラは、涼宮ハルヒを少し大人にしたような千華留さんとか、true tearsの愛ちゃんにしか見えない夜々さん。千華留さんなどは、もう少し掘り下げて欲しかったかな。

 まあ、そんなわけで、序盤は相当地味でパンチが少ない印象だったんですが、終わってみるとなかなか面白い作品ではありました。無理やりまとめ。

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[名作アニメレビュー] シムーン - 2009.04.24 Fri

 見事な「物語」だと思う。ファンタジーとして、SFとして、青春群像劇として。いくつもの絡み合う糸がひとつになって行く様は、よく出来た小説を読む感覚に近い。

 その世界では、すべてのヒトが女性として生まれ、17歳になったら自分で男女の性別を選ぶことができる。そして空を自由に飛ぶ古代機械シムーンを操ることができるのは、まだ男女に分かれる前の「巫女」だけだった。しかし、隣国との戦争の激化により、シムーンは兵器として使われるようになるのだった―――。

作   品   名 総合評価 テーマ
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動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
シムーン 8.8 10 10 10
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 科学技術を目的にした戦争。宗教対立、神への愛、神とは何か?―――。こんなメディア的に苦手そうなテーマを、架空の世界が舞台とは言え、よく描いたもんだ、と思います。もっとも一番は「少女であること、とは何か」というロマンティックなテーマを描くことでしょう。

 専門用語の説明が多い上に登場人物が多いわ、ヒロインの片割れは引きこもってるわ(笑)でどうなるかと思った序盤から急速に化けていった印象があります。第1部終了と言える第9話の頃には、もうすっかりこの世界観に引き込まれていました。

 放映当時は、あまり話題にならなかったようですが、どうもプロモーションの仕方に問題があったんじゃないかと。公式サイトを初め、萌えと百合を露骨に意識しているように感じられますが、作品自体は正統派なSFであり、極めてドラマ性の高いファンタジーでもあります。たぶんもっと多くの人が楽しめる作品だったはずなのになぁ、と非常に残念でなりません。

 また面白い試みとして、「皆、かつては少女だった」という設定を生かすために、大人の男性にも女性声優を使うという徹底ぶり。最初こそ違和感がありましたが、慣れてくると、この世界観はこれでなければ、という気がしてくるから不思議。繊細なキャラクターの微妙な心情を表現する脚本も素晴らしく、多数の登場人物たちは皆それぞれ魅力的。個人的にはワポーリフとモリナスのコンビが印象に残っています。

 他に特筆すべきことが2点。ひとつは古代飛行機械「シムーン」のデザイン。巨大なアンモナイトのような有機的な機体が空を翔る様は幻想的で美しいです。もう一つは音楽。佐橋俊彦によるタンゴとワルツのリズムを多用したBGMが、作品のロマンティックな部分にマッチしていて◎。

 ベストエピソード感想は続きにて。

[名作アニメレビュー] カレイドスター/カレイドスター新たなる翼 - 2009.01.10 Sat

 序盤こそ、「ありがちじゃね?」とか思っていたのだけれど、主人公が主役を演じる中盤あたりから急速に引き込まれていった。夢を追うこと、なんていうとありがちなテーマに聞こえるけれど、この作品ほどそのテーマを表現することに情熱を傾けているアニメ作品を僕は知らない。

 主人公苗木野そらは、幼い頃見た「カレイドステージ」の感動が忘れられず、自らもそのステージに立ちたいという想いから単身渡米する。彼女は様々な苦難を乗り越え、真のカレイドスターを目指す―――。スポ根ものをベースに少女の成長を描く、第1期26話、第2期25話(うち1,2話は総集編)+OVA2話からなる作品。

作   品   名 総合評価 テーマ
構 成
脚 本
キャラクタ
動 画
演 出
背 景
美 術
音 楽
カレイドスター 8.6 10 10
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カレイドスター
新たなる翼
8.6 10 10
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カレイドスターExtra Stage
笑わないすごいお姫様
6.8
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Legend of Phoenix
レイラ・ハミルトン物語
7.8
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 普段、漫画的デフォルメを多用するアニメは結構苦手ですが、これといい、ARIAといい、佐藤順一監督作品だけは好きなものが多いです。キャラクターを重視する作品の場合、そういった記号性は画一的な束縛となって詰まらない印象を与えるけれど、佐藤監督の場合、「キャラクターの個性」よりも「キャラクター同士の関わり」や「物語自体のテーマ」に重きを置いている印象があるせいかもしれません。

 物語のテーマは上に挙げたように「夢を追うことの素晴らしさ」だったりするわけだが、序盤の小さなエピソードから「困難に突き当たる→努力→克服→本番ステージでの演技」という構成を繰り返しながら、全体として終盤の大きなステージへ盛り上がっていくという流れが上手い。演技者の立場の物語という意味で「ガラスの仮面」や「銀盤カレイドスコープ(特に小説版)」が好きな人はきっと気に入ると思う。第1期・第2期ともに感動もののラストは必見。

 キャラクターの関わりという意味では、主人公そらとライバルであり憧れでもあるレイラとの関係が見所のひとつ。第1期はスポ根ものの王道な展開ですが、特に第2期に入って画面に現れることが少なくなってからのレイラの存在感が凄いですね。どうも僕は「灰羽」や「電脳コイル」といい、この手の女性同士の「友情以上の絆」的なものに弱いのか。

 ちなみに某掲示板のAAで有名になった「あやまれ!レイラさんにあやまれ!」は第2期序盤(第31話)で見られます。このシーンもそうですが、この作品、主演の苗木野そら(CV広橋涼)をはじめ、声優さんの熱演による名シーンが多く、ぐっときます。

 最後に、この作品は音楽も良いです。シーン毎にかかる定番の曲は美しい旋律が印象的な曲が多く、シーンをドラマチックに盛り上げてくれます。音楽担当の窪田ミナはARIAのOPを手がけている他、実写ドラマのBGMを手がけたりしている方。サウンドトラックはかつて限定販売されたDVD-BOXの特典だけだとかで、非常に残念。

 ベストエピソード感想を後日追加予定。


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